オアシス(Oasis)おすすめ名盤『 (What’s the Story) Morning Glory?』全曲レビュー|洋楽初心者の入門に最適!90年代UKロックの金字塔

オアシス(Oasis)おすすめ名盤『 (What’s the Story) Morning Glory?』全曲レビュー|洋楽初心者の入門に最適!90年代UKロックの金字塔 Alternative Rock / Grunge

「洋楽を聴いてみたいけど、どこから入ればいいか分からない」——そう思っている人に、まっさきに薦めたい一枚がこれです。

Oasis の『(What’s The Story) Morning Glory?』は、難しいことを何も考えずに、ただ流しているだけで気持ちよくなれるアルバムです。サビで自然と口ずさんでいる自分に気づいたとき、洋楽との距離がぐっと縮まっているはずです。

世界累計1,500万枚以上。ロックを象徴する一枚として、今も聴かれ続けています。

制作背景

1995年5月、前作の成功を受けて Oasis はウェールズのスタジオで録音を開始しました。Noel Gallagherとプロデューサーの Owen Morris が中心となってセッションを引っ張り、1日1曲ペースで進めた。全録音期間は、わずか15日間です。

しかしセッションには大きな亀裂が入ります。Noel がいくつかのトラックでリードボーカルをとることを Liam に提案したとき、Liam はそれを自分の排除への布石と受け取り、録音は3週間中断されました。Liam がクリケットのバットを兄に向けて振り回したという話も伝わっています。

それでも Morris は2010年のインタビューでこう振り返っています。「あのセッションは、私がスタジオで経験した中で最高に、最も気楽で、最もクリエイティブな時間だった。Morning Glory は、その不完全さとフローを含めて、愛と幸せに満ちている」と。

混乱と幸福が同居したセッション——それがそのまま音盤に刻まれています。

アルバムは初週に UK で345,000枚を売り上げ、当時2番目に速い初週セールスを記録しました。UK アルバムチャートで10週連続1位となり、「Wonderwall」は米 Billboard のオルタナティブ・ソング・チャートで首位を獲得しています。

ジャケットはロンドン、バービック・ストリートで2人の男がすれ違う写真です。撮影コストは25,000ポンド。背景に Morris がマスターテープを顔の前にかざして映り込んでいます。

Noel は後年、「誰がこのジャケットをOKしたんだ?」と聞いてみたら「あなたですよ」と言われた、と笑っています。

音楽性

前作と最も大きく異なるのは、音の層の厚さです。『Definitely Maybe』がアンサンブルの「塊感」で押し切るアルバムだったのに対し、本作ではストリングスとピアノが随所に入り、バラードが前に出てくる。Noel は旋律とコーラスの設計に軸足を移しました。

プロダクションの際立った特徴は、Morris が用いた過剰なコンプレッションです。「ブリックウォール・リミッティング」と呼ばれる手法で、このアルバムが「ラウドネス戦争」の口火を切ったと指摘する批評家も多い。

Noel は「おそらく史上最もラウドなアルバムだ」と冗談めかして語っていますが、確かにあの音圧には、スタジアムで大勢の人間が一緒に聴くことを前提としたような鳴り方があります。

ギターの参照点は The Beatles——とりわけ後期の分厚いコーラス・ワークと、開放的なコード感です。批評家はリリース当初「ビートルズの二番煎じ」と指摘しましたが、Noel はそれを隠す気がなかった。

「新しいことをしようとしているんじゃない。良い曲を書きたいだけだ」——そのスタンスが、このアルバムの骨格を作っています。

Liam のボーカルはフラットでやや鼻にかかった発声で、感情表現の振り幅が狭く聴こえるかもしれません。しかしそれがむしろ「確信の声」として響いていて、どんな歌詞が乗っても揺るがない芯の強さになっている。

Noel がコーラスやバッキングボーカルで Liam に重なるとき、兄弟の声質の差が音楽的な奥行きを生んでいます。——これは Oasis にしかない構造です。

楽曲解説

Hello

アルバムを蹴破るように始まる1曲目です。Gary Glitter の「Hello Hello I’m Back Again」(1973年)を引用しているため、Glitter と Mike Leander が Noel と並んで共同作曲者にクレジットされています。Oasis の曲で Noel 単独クレジットでない、唯一の例外です。

キーは Bメジャーで、イントロのリフはシンプルな I – V – IV の動きを繰り返します。コード自体に複雑さはないが、その分バンドのアンサンブルが前に出てくる。ドラムのフィルを余計に入れず、ノイズを最小限に抑えているぶん、かえって爆発的な推進力が生まれています。

歌詞の「People got embroiled in the everyday grind」は、成功を掴んだバンドが「俺たちは戻ってきた」と宣言する自己提示として読める。これ以上ないオープニングです。

Roll With It

1995年8月、この曲は Blur の「Country House」と同じ週にリリースされ、UK シングル・チャートの首位を巡って真っ向から激突しました。メディアが「ブリットポップの戦争」と煽ったその勝負は、Blur が1位を獲得して終わります。しかしアルバムの売り上げは Oasis が圧倒的に上回りました。

キーは Aメジャー。進行はシンプルな I – IV – V の繰り返しで、ロックンロールの文法そのものです。Liam のボーカルはこの曲では珍しく肩の力が抜けていて、「日常をそのまま楽しめ」というメッセージが声のトーンにそのまま出ている。

歌詞が単純であればあるほど、スタジアムで全員が一緒に歌える——その計算か本能かは分かりませんが、結果として見事に機能しています。

Wonderwall

このアルバムで最も速く録音された曲です。数時間でスタートからフィニッシュまで仕上げたと伝えられています。Noel がベース・パートも自ら弾き直し、アコースティックとパーカッションと多重コーラスで構成されたアレンジは、前作とは全く異なる音の顔をしています。

カポを2フレットに装着して Em/G キーで演奏されていますが、実音は F#マイナーです。ヴァースのコード進行は Em7 – G – Dsus4 – A7sus4 の繰り返しで、すべてのコードに G と D の音が共通して含まれています。

この「ペダルノート」の効果が、曲全体に浮遊するような統一感をもたらしています。サスペンデッドコード(sus4)を多用することでコードが「解決しない」まま次へ進んでいく感覚があり、それが歌詞の問いかけの曖昧さと重なっています。

Noel は「特定の誰かについての曲ではない」と語るにとどめていて、そのぼかし方が歌詞の強さになっている。米 Billboard のオルタナティブ・ソング・チャートで首位、全米 Hot 100 で9位。Oasis が初めてアメリカで真剣に受け取られた瞬間です。

Don’t Look Back in Anger

Noel がリードボーカルをとる、アルバムのもうひとつのアンセムです。ピアノのイントロは John Lennon の Imagine を参照したと指摘されることが多く、Noel も完全には否定していません。

キーは Cメジャー。ヴァースとコーラスのコード進行はパッヘルベルのカノンに近い構造——C – G – Am – E – F – C – F – G の変形で、数百曲に共通するほど「普遍的な落ち着き」を持つ進行です。

プレコーラスで Fメジャーと Fマイナーを行き来するフレーズが現れ、そのまま C から Am、さらに E へとクロマティックに動く。これが曲全体の中で最も感情的な「引力」を生む箇所で、そのテンションがサビの「So Sally can wait」で一気に解放される。構造として、本当によく設計されています。

2017年のマンチェスター・アリーナ爆発テロ事件の翌日、市内の追悼集会でこの曲がアカペラで歌われました。その映像を見たとき、これが「ロック」という枠を超えて、ある世代の共同記憶になっていると実感しました。

Hey Now!

アルバムの中で最も評価が割れる曲です。5分42秒という尺の長さが、コンパクトなポップ・アルバムの流れの中でやや浮いて聴こえることがある。

「Definitely Maybe に入っていたら主要トラックになった曲だが、このアルバムのサウンドとは少しズレている」——そんな指摘も、わかる気がします。

キーは Aマイナーで、アルバムの中で唯一マイナーキーを基調とする曲です。ヴァースは Am – G のシンプルな往復で、どこか憂鬱な色合いがある。コーラスで Cメジャーへ転じることで一瞬開けた感触が生まれますが、すぐ Aマイナーに戻る。その繰り返しが「逃げ場のない焦燥」のような感触を作っています。

好き嫌いは分かれますが、わたしはこの曲の Liam の声の温度が好きです。

[Untitled](The Swamp Song Excerpt #1)

44秒のインタールードです。「The Swamp Song」の冒頭部分で、ヘヴィなギター・リフが突然現れてすぐに消えます。

アルバムの流れを一度「止める」役割を持ちつつ、次の「Some Might Say」へ向けて空気を切り替えるブリッジです。完全版の「The Swamp Song」は B面コレクション『The Masterplan』(1998年)に収録されています。

Some Might Say

アルバムのリリースに先立って1995年4月にシングルとして発売され、UK シングルチャートで1位を獲得しました。Oasis 初の1位シングルです。

キーは Eメジャー。イントロのリフは E – A – B の繰り返しで、「Roll With It」と同じ I – IV – V の構造ですが、テンポとベースラインの重さが全く異なる重量感をもたらしています。Liam のハイトーンがコーラスへ突き抜ける瞬間に、スタジアムの規模が感じられます。

ドラムは Tony McCarroll で、後任の Alan White ではなくこの曲だけ旧ドラマーが演奏しています。McCarroll はこのシングルのリリース直後にバンドを脱退(解雇)された——Oasis 初の1位シングルが、彼の最後の録音でもあった。

Cast No Shadow

Noel がスタジオへ向かう電車の中で書いた曲です。到着してすぐに録音を始め、その日のうちに仕上げたと伝えられています。

The Verve の Richard Ashcroft に捧げた曲で、レコードのスリーヴにも「dedicated to the genius of the street」と記されています。当時 Ashcroft は深刻なスランプと精神的な困難の中にいました。

キーは Gメジャー。アコースティックとストリングスが交差する静かなアレンジで、G – D – Em – C という I – V – VI – IV の進行が基盤です。このコード進行は無数のポップ・ヒットに共通する構造ですが、Noel のメロディの乗せ方と Liam のボーカルの抑制が、曲に独特の「祈り」のような色を与えています。

「影を落とさないで」というメッセージが、Liam の淡々とした声を通すことで、説教にならずに届いてくる。アルバムの中でこの曲だけが持つ、静かな芯の強さがあります。

She’s Electric

「Cast No Shadow」の後の気圧の変化が面白い。重さと静けさの後に、軽くてポップなこの曲が来ることで、アルバムの表情がひとつ広がります。

キーは Eメジャー。コード進行は E – A – E – B という基本的な構造ですが、ブリッジで C#マイナーと Aマイナーが交互に現れ、ここだけ曲の色が少し翳る。その後コーラスへ戻るときの解放感が、曲の快楽の核心です。

Liam がコーラスで見せるファルセットが「意図してやっているのか偶然なのか分からない」独特の軽やかさを持っていて、バンドの遊び心がそのまま音になっている。Noel は「ビートルズは常に意識している」と答えるだけですが、それで十分な気がします。

Morning Glory

タイトル曲です。ギターのリフが轟き始めた瞬間から、アルバムの空気が一変します。前半の親密さや静けさを全部ぶっ飛ばすような音量と推進力です。

キーは Bメジャー——「Hello」と同じキーで、アルバムが円環を描くような構造になっています。リフは B – A – E の繰り返しで、そこにドラムの直線的な推進力とベースのうねりが重なる。

コーラスで Eメジャーへ転じるとき、その転調が一瞬「外に出た」ような開放感を生む。「need a little time to wake up」というラインが、煽り文句でも比喩でもなく、単純な起爆剤として機能しています。

イントロには「ヘリコプターの音」が混入していて、Morris が故意に入れたものとも偶然の産物とも言われています。どちらにせよ、あの轟音の質感を作る一要素になっている。

[Untitled](The Swamp Song Excerpt #2)

39秒。1枚目と同じリフが再び現れて消えます。「Morning Glory」の爆発の後に置かれることで、次の「Champagne Supernova」への助走として働いています。

このインタールードが2回使われることで、アルバムに意図的な「呼吸」が設けられています。

Champagne Supernova

アルバムを閉じる7分31秒です。ゲストの Paul Weller がギターソロとバッキングボーカルで参加しています。Weller は Modfather と呼ばれるブリティッシュ・ロックの重鎮で、Noel が長年尊敬してきた人物です。

「ギターを弾いているのが Weller だと分かった瞬間、曲の意味が変わった」という感覚を覚える人は少なくないと思います。

キーは Aメジャー。ヴァースは A – E – F#m – D という I – V – VI – IV 進行の繰り返しで、「Cast No Shadow」と同じ和声の骨格を持ちながら、スケールが全く違う。コーラスに入ると Eへ転調し、ストリングスとノイズが重なりながら空間を広げていく。8分近い尺の中で曲は何度も波を作り、終盤でギターのノイズと一緒に溶けていきます。

歌詞は Noel が「意味よりも響きで書いた」と認めています。なかでも「Slowly walking down the hall / Faster than a cannonball」——「ゆっくりと廊下を歩きながら、砲弾よりも速く」——という矛盾したフレーズは今も解釈が割れています。

「ゆっくり」と「砲弾より速く」が同じ一人の人間に起きている。その矛盾をそのまま並べることで、言葉では説明できない何かを指し示そうとしているんだと思います。

答えを求める問いではない——聴き終えたあとに時間の感覚が溶けているような感触があれば、それがこの曲の正しい聴き方だと思います。

まとめ

リリース当時の批評は今と随分違いました。「ビートルズの影響が強すぎる」「安全運転だ」と言われた。

しかし時間が経つにつれて評価は逆転しました。Noel が「新しいことをしない」という選択をしたことが、このアルバムを時代から自由にした。コードもメロディも既視感がある。それでも演奏と声と確信によって、誰にも作れないものになっています。

「Morning Glory は、その不完全さと欠点のすべてを含めて、愛と幸福に満ちている」——Morris のこの言葉が、このアルバムを一番よく言い当てていると思います。

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