キッス(Kiss)おすすめ名盤『地獄の軍団(Destroyer)』レビュー|名曲「Detroit Rock City」収録!70年代ハードロックの金字塔に迫る

キッス(Kiss)おすすめ名盤『地獄の軍団(Destroyer)』レビュー|名曲「Detroit Rock City」収録!70年代ハードロックの金字塔に迫る Hard Rock

Kiss の『Destroyer』は、1976年にリリースされた4枚目のスタジオアルバムだ。メンバーは Gene Simmons(ベース・ボーカル)、Paul Stanley(ギター・ボーカル)、Ace Frehley(ギター)、Peter Criss(ドラム・ボーカル)。プロデュースは Bob Ezrin。全米チャート11位、同年のプラチナ認定、「Beth」が Billboard Hot 100 最高7位を記録した。

前作のライブアルバム『Alive!』(1975年)でアリーナ・バンドとしての地位を確立した後、スタジオ作としてどこまでスケールを拡大できるかに挑んだ。Ezrin はこう語っている。「彼らに、セックスとロックンロールの先にあるものを引き出させようとした。このキャラクターたちに、もう少し人間らしい肉付けをしなければならなかった」と。

その言葉の通り、このアルバムで Kiss は変わった。単純に派手なバンドではなくなった。

制作背景

リハーサルは1975年8月から始まった。Ezrin はバンドをサークル状に並べ、一人ずつ楽器の弾き方を確認し直すところから始めた。Simmons はこう振り返っている。「チューニングの仕方を教わったのは彼が最初だった。それまで自己流でやってきた」と。Stanley は「音楽的なブートキャンプだった。でも、抜けてきたときには全員が賢くなっていた」とも語っている。

「Detroit Rock City」の Simmons のベースラインが Curtis Mayfield の「Freddie’s Dead」(1972年)を参照していることは、Stanley が後に認めている。Ezrin がバンドに示した参照点の一つだった。このアルバムの準備で、バンドは自分たちの音楽的なルーツと向き合い直した。

セッションには外部ミュージシャンも参加した。Alice Cooper のバンドのギタリスト Dick Wagner が数曲でギターを弾いた——「Beth」のアコースティック・ギターも彼だ。

ニューヨーク・フィルハーモニックのメンバーが弦楽を担当し、ブルックリン・ボーイズ・コーラスがコーラスに加わった。スタジオで作る音楽として、前3作とはまったく別の規模になっていた。

音楽性

このアルバムの骨格は、ブルースから来たシンプルなハードロックだ。I – IV – V 中心の進行、パワーコードのリフ、2拍目と4拍目を強調するバックビート——Kiss が前3作で作ってきたものと基本的な素材は変わっていない。

しかし Ezrin がその上に載せたもの——SE、ストリングス、子どもの合唱、映画的なイントロ——が、音楽のスケールをアリーナ規模に押し広げた。「やりすぎ」と言われれば確かにそうだが、それが Kiss の音楽に合っていた。

Frehley のギターは、このアルバムで最も歌いやすく弾かれている。中域を重視した歪みで、速さよりもフレーズの旋律の強さを優先する。Ezrin が「Detroit Rock City」のソロについて「クラシカルな感じがする。でもあの場所にはあれしかなかった」と語ったように、テクニックの誇示ではなく曲の感情に寄り添うギターだ。

Criss のドラムは、このアルバムで自身の最高の仕事をしたと語っている。「全部の部分を書き出して、計画を立てた。他のアルバムではそんなことは一度もしなかった」と。「Do You Love Me?」や「Detroit Rock City」での手数の使い方に、そのこだわりが出ている。

Simmons と Stanley の二声ボーカルが、このアルバムをポップスのやり方でハードロックを書いた作品にしている。3度や5度でのハーモニー、コーラスでのユニゾン——あの声の厚みは、アリーナを満たすために作られたものだ。そこへ Criss の粗くて柔らかい声が加わることで、アルバム全体の感情の幅が広がった。

1976年の同時代でいえば、Aerosmith の『Rocks』と同じ年にリリースされている。Aerosmith がよりブルースの泥臭さを前面に出したのに対し、Kiss はシアトリカルな大きさを選んだ。どちらもアリーナ・ロックの到来を告げていたが、そのやり方はまったく異なっていた。

Nirvana が「Do You Love Me?」をカバーし、White Zombie、Melvins、Entombed らが「Destroyer」の楽曲を取り上げた。ハードロック・バンドがオーケストレーションやストリングスを使うことへの心理的なハードルを下げた点でも、このアルバムの影響は大きい。「Beth」が成功したことで、ハードロックのバンドが「バラードを出してもいい」という流れが生まれたのだと思う。

楽曲解説

Detroit Rock City

Kiss のコンサートへ向かう途中に交通事故で亡くなったファンの話を元にした曲で、Stanley がその後に書いた。冒頭のラジオ放送の SE と車の走行音が、リスナーを「夜のドライブ」という物語に引き込んでから、バンドが一気に入ってくる。

和声的には E を中心に動き、ヴァースで E ナチュラルマイナー的な暗さを持ちながら、サビで G# を含む明るい響きが混じる。「短調と長調の境界を行き来する」感触が、この曲の「高揚感と影」を同時に作っている。

リフは E5 – D5 – C#5 を中心としたパワーコードの動きで、シンコペーションが疾走感を生む。Frehley のソロは、E マイナー・ペンタトニックを軸にしながらミクソリディアン的な G# を挟み込む。速さではなく旋律の強度で勝負しているソロだ。

聴いてほしい瞬間はそのソロの入り口——Criss のドラムが踏み込んで、フレーズが飛び上がる瞬間だ。

Beth

Criss がリードボーカルを務め、Billboard Hot 100 で7位を記録した曲。もともと「Detroit Rock City」のB面として発売されたが、ラジオのDJが裏面をかけ始め、リスナーの要望が殺到して再発売された。「Beth」が Rod Stewart の曲だと思っていたリスナーもいたという——それほど、Kiss のイメージとかけ離れていた。

キーは E♭メジャーで、I – vi – IV – V を中心としたポップ進行が基本だ。ピアノとストリングスが楽曲を支え、Criss の声が前に出る。Ezrin は「あの声で、労働者階級の男の素朴な孤独が出た。彼は完全に信じられた」と語っている。

サビでのメロディの動きが巧みだ。同じ音を繰り返しながら、コードが変わることでその音の機能が変わる——「同じなのに変化している」感触がある。聴いてほしい瞬間はサビの「Beth, I hear you calling」の「calling」の音の延び方だ。コードが変わる瞬間に、その音の色が変わる。

Shout It Out Loud

ライブで観客がコール&レスポンスするために作られた曲。Stanley と Simmons が「Shout It Out Loud」のサビを Ezrin と朝食の場で作り上げたというエピソードがある——あのシンプルなフレーズが狙って設計されたものだということが、よくわかる。

キーは G メジャーで、I – IV – V と I – ♭VII – IV を使ったロックンロールの定番進行が骨格だ。サビのメロディは5度とルートを往復する単純なラインで、その上下にハーモニーが重なることで大合唱の壁が生まれる。

Criss のドラムの仕事が光る曲でもある。ヴォーカルが息継ぎする行間に、フィルインをうまく差し込むことで、コーラスが途切れない感覚を作っている。聴いてほしい瞬間はサビとブリッジの境目——音量が一段落ちてから、再び爆発する瞬間の落差だ。

まとめ

『Destroyer』は、Kiss というバンドが「ステージだけのバンド」ではないことを証明したアルバムだ。SE、ストリングス、精緻なボーカル・アレンジ——それらを詰め込みながら、最終的にすべてが「観客と一緒に歌う快感」に向かっている。

Rolling Stone は発売当時「肥大したバラードと凡庸なドラミング」と評した。Criss はその後「Beth があの評価を覆した」と言っている。時間が証明することというのは、確かにある。

今聴いても、リフの強度、メロディのフック、アレンジの密度は古びていない。

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