Magdalena Bay の『Imaginal Disk』は、2024年8月にリリースされた2枚目のスタジオアルバムだ。Pitchfork が「Best New Album」に選出し、NME が5点満点、The Guardian が星5つを与えた。Rate Your Music では2024年の年間1位に選ばれている。
Magdalena Bay は Mica Tenenbaum(ボーカル、シンセサイザー)と Matthew Lewin(プロデュース、ギター、シンセサイザー)によるロサンゼルスのデュオだ。マイアミの高校のアフタースクール・プログラムで出会い、プログレッシブ・ロックのバンドを組んだのが始まり——当時 Lewin は16歳、Tenenbaum は15歳だった。
タイトルの「imaginal disk」は昆虫の変態から来ている。幼虫がサナギの中で完全に溶けたとき、蝶へと再構築するための設計図として機能する細胞構造のことだ。Tenenbaum がその概念を読んで、アルバムのコンセプトに結びつけた。
制作背景
Tenenbaum がツアー中に読んでいたのはスタニスワフ・レムの SF 小説『ソラリス』と、精神分析に関する本だった。「自己とは何か」という個人的な問いが、やがてよりスケールの大きな SF 的物語に変わっていったと彼女は語っている。
アルバムは「True」というキャラクターの物語を軸に構成されている。宇宙人によって額に「ディスク・アップグレード」を強制された True が、それを受け付けられず、人間であることの意味を探す旅をする——というストーリーだ。ただし Tenenbaum は「ストーリーを知らなくても聴ける」と言い、実際その通りだ。
影響源として二人が挙げるのは、ELO、Genesis、Beatles(特に Tenenbaum が制作中にはまったポール・マッカートニー期)、Björk の映画スコア、Peter Gabriel のミュージックビデオ。プログレ少年だった Lewin の趣味と、Tenenbaum の映画的なビジュアル感覚が、このアルバムで初めて完全に一致した。
「Love Is Everywhere」は、もともと Lil Yachty のために書いた曲を作り直したものだ。そういう予期せぬ経路がアルバムの中に埋まっている。
音楽性
シンセポップ、アート・ポップ、プログ・ポップ——どれも当てはまるが、どれか一つでは足りない。Lewin は「ポップとより奇妙な逸脱や展開の間の、熱い格闘」と表現していて、その言葉が正確だと思う。ポップの約束事に従いながら、どこかで必ず予想を裏切る。
ほぼすべての音は Lewin が自分で作っている。シンセのレイヤー、打ち込みのドラム、生演奏のギター——「超高度に磨かれた音が、でも有機的に呼吸している」という感覚は、何時間もかけて一つの音を作り込む Lewin の制作方法から来ている。ヴィンテージ・シンセの倍音を丁寧に積み重ねたプロダクションは、80年代ポップへの愛着と現代のエレクトロニクスへの精通が同居している。
Tenenbaum のボーカルはこのアルバムで最も多様な表情を見せる。「She Looked Like Me!」冒頭のポップな軽さ、「Vampire in the Corner」終盤の絶叫に近い叫び、「Image」の皮肉を含んだ淡々とした歌い方——同じ人物の声だと気づくのに数秒かかることがある。
ボーカルへのエフェクト処理も意図的で、「人間と機械の境界」というテーマが声の扱い方にも出ている。
和声的には、シンプルなポップ進行に予想外のコードが一つ差し込まれる瞬間が繰り返し訪れる。「Death & Romance」のコーラス前に短い転調が入り、「Tunnel Vision」ではオーケストラ・ヒットが唐突に挿入される。驚かせるための外しではなく、感情的な必然として来る——それが聴くたびに「そうそうここだ」と思わせる。
「That’s My Floor」のグルーヴはディスコとファンクの語法で動き、「Cry for Me」はレトロなシンセポップ、「Angel on a Satellite」は壮大なアンセムとして展開する。15曲で15の異なる表情を持ちながら、全体として一つの旅として設計されている。
クローザー「The Ballad of Matt & Mica」は、Lewin が自然体で弾いた進行から生まれたという。最後にすべての武装が外れたような静けさがある。
「みんな今は短い曲だと言うけど、人々はアルバムをまだ本当に大切にしている」——Tenenbaum のこの言葉は、53分のアルバムを丸ごと作ることへの賭けだった。その賭けは当たった。
まとめ
このアルバムを聴き終えたとき、Tenenbaum はボイスメモを残した。「これが私たちで、今私たちは幸せです」——完成の喜びをそのまま記録しておきたかったのだ。
その喜びは音楽に染み込んでいる。難解なコンセプトも、複雑なプロダクションも、最終的には「踊りたい」と「泣きたい」の間を行き来させる。それがこのアルバムの強さだと思う。