Caroline Polachekの『Desire, I Want to Turn Into You』は、2023年にリリースされた4枚目のアルバムだ。Metacriticスコア94点。制作はPolachek自身とDanny L Harleが中心となり、A.G. Cook、Jim-E Stack、Dan Nigroらが加わった。バグパイプ、子どもの合唱団、スペインギター、ドラムンベース、ケルト・フォーク——それらが1枚に収まっている。
Polachekはポップ・グループChairliftのボーカリストとして2008年にデビューし、「Ramona Lisa」「CEP」名義でのソロ活動を経て現在に至る。彼女が繰り返し挙げる影響源はKate Bush、Björk、Cocteau Twins——いずれも声を言語の意味ではなく音の形として使うアーティストたちだ。今作では、A.G. CookとDanny L HarleというPC Musicの中心人物との共作が、その発想をデジタルの極限まで広げた。
前作『Pang』の制作中に書かれた「Welcome to My Island」は、Polachekが「自分の頭に閉じ込められているという感覚をからかった」曲だと説明し、「自分がこれまで作った中で最も生意気な曲」と語っている。アルバムの冒頭で1オクターブを駆け上がるあの叫びは、普通のポップスなら「やりすぎ」とボツにする種類の声だ。だが彼女は、その不自然さが正しいと知っている。
音楽性
このアルバムが面白いのは、「マキシマリスト」という言葉の意味を更新しているからだと思う。音数が多いのではなく、文脈の数が多い。バグパイプが突然登場する「Blood and Butter」は、その好例だ。スコットランドのバグパイプ奏者Brìghde Chaimbeulが演奏するそのソロは、確かに意外だが、違和感がない。それ自体が奇妙だ。
コードの造りも独特で、王道のメジャーコードの多幸感の中に、中世ヨーロッパの旋法的な動きやマイナーコードが突然入り込んでくる。明るいはずのサウンドが、一瞬だけ不穏な影を帯びる。その「知的な違和感」が耳を離さない。Polachekの声はその上で、制御された人工的な音処理と、本人の肉声の生々しさの間を行き来している。
「Fly to You」はDidoとGrimesとの共演で、ドラムンベース的なビートとラテン的なギターに3人の異質な声が重なる。「Billions」の終わりでは、ロンドンの子どもの合唱団が「I never felt so close to you」と歌いながら遠くへ消えていく。欲望を高らかに描いたアルバムが、静かな合唱で閉じる。その落差の設計が見事だ。
批判的に見れば、このアルバムは「ごった煮」に見えることもある。多様すぎるテクスチャーが一枚のアルバムとして収まり切れていないと感じる聴き手がいるのも分かる。ただ私には、Polachekが選択肢を絞り込もうとしていないこと自体が、このアルバムの正しい在り方に思えた。何かになろうとしている最中の、制御不能な欲望の感触——タイトルが言っていることは、まさにそれだ。
まとめ
「あなたに溶けてしまいたい、という意味でもあるし、欲望そのものに変身したい、という意味でもある」——Polachekはタイトルの意味をそう説明している。その曖昧さが、アルバム全体の解釈を豊かにしている。
欲望、執着、自己犠牲。古臭いほど人間的な感情が、これほど冷たくも熱い音楽になっている。

