ティーンエイジ・ファンクラブ(Teenage Fanclub)おすすめ名盤『Bandwagonesque』レビュー|ノイズとハーモニーが同居する轟音ギターロック/パワー・ポップの名作

ティーンエイジ・ファンクラブ(Teenage Fanclub)おすすめ名盤『Bandwagonesque』レビュー|ノイズとハーモニーが同居する轟音ギターロック/パワー・ポップの名作 Pop Rock / Power Pop


Teenage Fanclubの『Bandwagonesque』(1991年)は、1991年にNirvanaが世界をひっくり返していたその裏側で、スコットランドから届いたとんでもなく人懐っこいアルバムです。

Norman Blake、Raymond McGinley、Gerard Love(いずれもギター・ボーカル)、Brendan O’Hare(ドラム)の4人によるバンドの3rdアルバムで、Don Flemingがプロデュースを担当しました。

Spin誌が1991年のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選び、Nirvanaの『Nevermind』を抑えた。

NMEの「500 Greatest Albums」では115位。2017年にはDeath Cab for CutieのBen Gibbardがアルバム全曲のカバー盤をリリースしている——「このアルバムがグランジ全盛のシアトルで自分に美しさを教えてくれた」と語りながら。

制作背景

バンドの出身はグラスゴー近郊のベルシル(Bellshill)。

C86ムーブメントを経由してインディ・ロックの文脈に入りながら、デビュー作『A Catholic Education』(1990年)はノイジーでラフな内容だった。

転機は1991年3月、ニューヨークのCBGBで行われたMatadorレコーズのイベントでDon Flemingとたまたま顔を合わせたこと。

FlemingはHole、Sonic Youth、Screaming Treesのプロデュースで知られるアメリカ人ミュージシャンで、バンドに一言だけ言った。「ハーモニーができるのに、なんでやらないんだ?今どき誰もやっていないのに」

その一言がアルバムの核心を決定した。

同年4月から5月にかけて録音が行われ、Flemingはバンドにボーカルハーモニーをとことんまでやるよう求め続けた。3人がそれぞれ曲を書き、それぞれがリード・ボーカルを取り、コーラスで声を重ねる——「放課後の部室」のような、少しゆるくて民主的な作り方。

Norman Blakeは後に「きれいに整えすぎていない、ちょっと雑なくらいのほうがいい」と語っていて、意図的に磨きすぎないことを選んでいた。

ジャケットのドル袋マークのロゴについては、KissのメンバーであるGene Simmonsがそのロゴを商標登録していたため、Simmonsの弁護士からGeffen Recordsに抗議文書が届いた。レーベルは折れてSimmonsに小切手を送ったと、Simmonsの著書に記されています。

アルバムを通じて5〜6分の曲から2分以下の曲まで混在しているのは、3人が独立して書いた曲を並べた結果で、誰もその整理をしなかったから。その「整理しなかった」ことが、このアルバムを逆に特別にした理由のひとつだと思います。

音楽性

このアルバムのライナーノーツ付属の評論で「Big Starの4thアルバム」と呼ばれたことがある——それほどAlex ChiltonとBig Starの影響が色濃い。

The Byrds、The Beach Boys、The Beatlesも同様で、Flemingが最初に「ハーモニーをやれ」と言った背景には、これらのバンドへの共通の愛着があったはずです。

ただし「Big Starの焼き直し」ではなく、ノイジーなギターとフィードバックをそのまま乗せた「グランジ時代のBig Star」として鳴っているところが、このアルバムを単なる60年代リバイバルに終わらせていない。

和声的に見ると、3人のボーカルが交互にリードを取りながら全員でコーラスに合流する構造が、アルバム全体を通じて一貫しています。

コーラスに入った瞬間に声が一枚の布のように広がる——その瞬間の解放感が、このアルバムの最大の和声的な快感です。

「The Concept」のメジャーコードの循環進行の上で声が何層にも重なる後半、「What You Do to Me」の1コーラス1コードというほとんど「コード進行なし」の設計でサビが爆発する瞬間——「難しいことをしていないのに美しい」の正体はここにある。

ボーカルスタイルという点では、3人の声質がそれぞれ違うことが逆に強みになっています。

Blakeのやや線の細い声、Loveの柔らかい低め、McGinleyの少し硬い質感——それが混ざると、どこか「学校のコーラス」的な親密さになる。

訓練された美声ではなく、うまいのかどうかよく分からない声が重なって何か大きいものになる——その「なぜか感動してしまう」感触は、技術では説明しにくい。

楽曲解説

The Concept

アルバムの幕開けを飾るBlake作の1曲目。

いきなりフィードバック・ノイズが炸裂して「おっ?」と思わせ、すぐに人懐っこい歌が始まる。後半の長いコーラスパートを聴いていると、何もかも許されているような気分になる。6分あるのに、終わってほしくないと本気で思う。

この曲は2011年の映画『Young Adult』でフィーチャーされ、Pitchforkはその映画評で「The Conceptが鳴り始めた瞬間に映画の核心が見えた」と書きました。

メジャーコードの循環の上でハーモニーが積み重なっていく後半は、和声的に何も特別なことをしていないのに、なぜかこちらの体が動く。

December

3曲目。Love作の、アコースティック・ギターの優しい音色から始まる少し切ない曲。

ノイズを封印して、メロディの良さだけで勝負しているところが潔くて好きです。

冬の冷たい空気感はあるけれど、不思議と心は温まる。Loveのボーカルがアルバム中で最も素直に前に出る一曲で、「この人の声は普段コーラスの中に埋まっているけれど、こんなに柔らかいんだ」と気づく瞬間でもある。

What You Do to Me

4曲目。たった2分弱の短い曲。でも、その2分にパワーポップの魔法が全部詰まっています。

一度聴いたら忘れられないサビで、難しいことは何一つしていないのに、これ以上付け足すものもない。

和声的には1コードをほぼ動かさないまま突き進む設計で、その「コード進行が止まっている」状態でサビが爆発するため、聴き手の予測がすべて裏切られる。

シングルとしてリリースされ、全英チャートで31位を記録した。Nirvanaのヨーロッパ・スカンジナビアツアーのサポートを務めていた時期の代表曲でもあります。

Star Sign

6曲目。McGinley作のこれぞパワーポップという一曲。

重厚なリフと、星座が輝くようなキラキラしたメロディの組み合わせが最高。

Big StarとCrazy Horseが同時に鳴っているような感触。ギターのフィードバックと、3声のコーラスが同居できることをこの2分半で証明している曲です。

Metal Baby

7曲目。Love作。The Byrdsを思わせるような12弦ギターのキラキラした響きが印象的なミッドテンポの曲で、サビで視界がパッと開けるような感覚がある。

激しさと透明感がこれだけ自然に同居している曲を、このアルバムの外に私はあまり思いつきません。

Byrds的な12弦の倍音が作る「広がり」とドライブするリズムの「重さ」が引っ張り合っているようで、実は同じ方向を向いている——そのバランスの取り方が、このアルバム全体のサウンドを一曲で凝縮しています。

まとめ

Spin誌のアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれたとか、Nirvanaを抑えたとか、そういう話はどうでもよくなる。

大事なのは、30年以上経った今聴いても、やっぱり「最高だな」と思わせてくれること。

一度聴き始めると、まるで履きなれたランニングシューズのように体に馴染んで、気づけば何年も手放せなくなる。ロックの喜びを凝縮したような作品が、ここにあります。

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