Interpolの『Turn On the Bright Lights』は、2002年8月20日にMatador Recordsからリリースされたデビュー・アルバムだ。
プロデュース・ミックス・エンジニアはPeter KatisとGareth Jonesが共同で担当した。
このアルバムを「Joy Divisionのフォロワー」と片付けるレビューを、今まで何本読んだかわからない。間違いじゃない。でも、それだけじゃないはずだ。
The StrokesやYeah Yeah Yeahsが注目を集めていた同じシーンの中で、Interpolは「比較的地味な存在」でした。
レーベルもRCAやInterScopeではなく、インディのMatadorを選んだ。
制作背景
録音は9/11のわずか1ヶ月強後に始まった。バンドメンバーはそれぞれ自分たちの建物の屋上からあの光景を目撃していた。
Carlos Denglerは、自分のアパートの屋上からタワーが崩れ落ちるのを見ていた。
アルバムの曲は9/11以前にすべて書かれていたが、あの出来事の後で曲たちは全く別の意味を纏うことになった。
Denglerはこう語っています。「俺たちは、まさに届こうとしていたメッセージのカードを手に持っていた」と。
コネチカット州ブリッジポートのPeter Katisの自宅スペースで、バンドは眠り、飲み、録音した。
テープが尽きる前に終わらせなければならないという900ドルの予算制約の中で。
音楽性
Joy DivisionとThe Cureの影響は明白だが、それ以上にTelevisionのギターの絡み合いとThe Velvet Underground的な耽美さが核心にある。
Daniel KesslerとPaul Banksの二本のギターは役割を曖昧にしたまま絡み合い、Carlos Denglerのベースラインはリードギターとほぼ同等の存在感で動き回る。
その「どちらが主役かわからない」アンサンブルが、冷たいのに官能的という独特の質感を生んでいます。
このアルバムのサウンドを一言で言い表すなら「統制された爆発」だ。
全曲、ベース・ドラム・ギター2本がライブで同時演奏された。Pro Toolsを使わず、完全にテープに録音された。その「同時性」がこのアルバムの緊張感の源です。
和声的な特徴として、このアルバムは「解決への引力を意図的に弱めている」点がある。
ミクソリディアンや六音音階といった手法で導音をほぼ省き、通常の長短調が持つ「家に帰りたがる」引力を薄める——コードが宙に浮いたまま前進するあの「着地しない」感覚が、歌詞の疎外感と構造的に一致しています。
KesslerはギターのアプローチについてFugaziからの影響を挙げています。一つひとつの楽器が暗い和音の中から浮かび上がっては消えていく、その無機質でありながら感情的なラインの絡み合いは最高だ。
Denglerのベースはこのアルバムのもうひとつの主役だ。彼の「一歩先を行く」ベースラインはアルバムの最大の個性のひとつで、Denglerは冗談めかして「アルバムのタイトルを自分の名前にするべきだった」と言った。
Banksはそれを笑い飛ばしながらも「ベースラインはもっと称えられるべきで、それがこの音楽の未来だと思わせてくれた」と語っています。
Banksの声も重要だ。感情を乗せているのに乗せているように聴こえない、その温度の低さが歌詞の疎外感をそのまま体現している。
ニューヨークのバンドでありながら、音はどこまでもヨーロッパ的です。Rolling StoneのRob Sheffieldは「glacial beauty(氷河のような美しさ)」と表現した。
同時代との関係では、このアルバムはその後The Killers、Editors、The xxなど多くのバンドに直接の影響を与えた。
The Strokesが同じ時代のニューヨークからポップへとひらいていく方向を選んだのに対して、Interpolはどこまでも暗く、どこまでも内側へと向かった。そのことがPitchforkをして「その年最も激しく情熱的なレコードの一枚」と言わせた。
楽曲解説
Untitled
アルバムの幕開けを飾り、バンドのライブ・オープニング曲として書かれた一曲。
ディレイをかけたギターリフが単一コードの下降パターンで繰り返される——E♭ミクソリディアンのモーダルな浮遊感の中、ハイハットが入り、ベースが地面から噴き出すように現れる。
Paul Banksのボーカルが入るまで、相当な時間がかかる。
これだけ「焦らす」オープニングを持つアルバムは、そうない。待たされた分だけ、声が入った瞬間の重さが違う。
Obstacle 1
アルバムで最もポストパンクの衝動がむき出しになる一曲。
Daniel KesslerとCarlos Denglerのギターとベースが互いを追いかけ合い、Paul Banksの声がその上で暗く輝く。
Dマイナーを軸にした六音音階構成——導音を省くことで解決への引力を弱めたこの和声が、曲の「終わりに向かわない」感覚を作り出している好例。ライブでも長くセットリストの核心に置かれ続けてきた。
NYC
アルバムタイトル「Turn on the Bright Lights」はこの曲の歌詞から取られている。
9/11後のニューヨークで録音されたアルバムの、核心にある一行。スカイスクレイパーの列を見上げながら「ニューヨークに期待していたものは、この街が与えてくれるものより大きかった」という感覚を鳴らしています。
Leif Erikson
アルバムの最後を飾るこの曲のタイトルは、コロンブスより500年早くアメリカ大陸に到達したとされるノルウェー人探検家の名前だ。
未知の領域への航海、未知への畏れと希望が混ざり合った感覚を象徴している。アルバムを通して積み重なってきた緊張が、ここで静かに着地する。
まとめ
The Strokesと同じ時代の同じシーンにいながら、Interpolが選んだのは正反対の方向でした。
The Strokesがポップへとひらいていくのをよそに、Interpolはどこまでも暗く、どこまでも内側へと向かった。
その判断が、20年後の今も「あの時代を代表する一枚」として残っている理由だと思う。

