シンディ・リー(Cindy Lee)おすすめアルバム『Diamond Jubilee』レビュー|ストリーミングなし、SNSなし——それでも2024年ベストアルバムになった理由

シンディ・リー(Cindy Lee)おすすめアルバム『Diamond Jubilee』レビュー|ストリーミングなし、SNSなし——それでも2024年ベストアルバムになった理由 Psychedelic Rock

Cindy Leeの『Diamond Jubilee』は、2024年にYouTubeへの一括アップロードと、1990年代のデザインのままのGeoCitiesページへのダウンロードリンクだけで公開されたアルバムだ。ストリーミングへの配信なし、プロモーションなし、インタビューなし。それでもPitchforkは4年間で最も高いスコアをつけ、年末にはPitchfork、Exclaim!、Gorilla vs. Bearが揃って2024年のベスト・アルバムに選んだ。

Cindy Leeはカナダの音楽家Patrick Flegelのプロジェクトだ。ポスト・パンク・バンドWomenの元ギタリスト/ボーカルだったFlegelは、バンドの解散後にドラッグ・パフォーマンスと作曲を組み合わせたプロジェクトとしてCindy Leeを始めた。「異性装と演奏を組み合わせることが、自分が本当に好きなことをやることを自分自身に許す方法になっていった」とFlegelはRedditのQ&Aで語っている。

制作はトロント、ダラム、カルガリー、モントリオールを移動しながら約4年をかけた。使用したのはスマートフォンよりも安いかもしれないデジタル8トラック・レコーダー1台だけで、楽器演奏はほぼすべてFlegel一人が担った。Freak Heat WavesのSteven Lindが一部のシンセと「Baby Blue」の共同作曲で加わった以外は、完全なソロ制作だ。

当時、前作の「暗さと禁忌」に対するカウンターとして「気分の上がる作品を作りたい」とFlegelは語っていた。「パティ・ペイジやスプリームスのような歌手が、人生で最もつらい時期を支えてくれた」とも。その言葉の通り、このアルバムの出発点は1950〜60年代のアメリカのガール・グループ、フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンド、そしてVelvet Undergroundだ。

音楽性

32曲・約2時間。その数字だけ聞くと身構えてしまうが、聴いてみると驚くほど軽い。重くない、という意味ではない——2時間が2時間に感じられない、ということだ。

録音はざらついていて、音はどこか遠くから聴こえてくるように処理されている。隣の部屋から、あるいは霞んだどこか遠くから流れてきているような質感だ。だがそのフィルターの向こうには、驚くほど純粋なポップ・ソングライティングが宿っている。ドゥーワップのコード進行、ガール・グループのハーモニー、ブリティッシュ・インヴェイジョンのギター——Flegelはそれらを「壊れたマスターテープ」のような表面を通して提示する。懐かしいはずのものが、どこか別の宇宙から届いたもののように聴こえる。

Flegelの声は両性的で柔らかく、特定の誰かを想起させない。その不特定性が、収録された32曲の恋の歌に奇妙な普遍性を与えている。

「Baby Blue」は恋の始まりの高揚を2分半で捕まえた曲で、それだけで単体のシングルとして成立する。「Always Dreaming」では愛と喪失が交互に描かれ、Flegelの声が何層にも重なるクライマックスへ積み上がっていく——そこで思わず音量を上げたくなる。「Kingdom Come」のギターのメロディは数十秒で耳に焼きつく。終盤の「遠くから君の音楽が聴こえた」という一節が、このアルバム全体の感触を一行で言い当てている。

批判的に見るなら、2時間という尺はどう好意的に捉えても長い。32曲の中には、それ単体では印象が薄い曲もある。アルバム全体を一つの世界として受け入れられれば、その薄さは余白に変わるが、曲単位で聴こうとすると散漫に感じるかもしれない。ライブでは、一人でこの世界観を再現することの限界も指摘されている。

それでも、「聴く手間が神秘性を作った」という見方は半分しか正しくないと思う。手間をかけて辿り着いた先に、本当に良い音楽があった。2024年にこれだけ広まったのはその順番だ。ストリーミングの外側に、こんな音楽がある。

まとめ

Flegelは一度もインタビューで語ることなく、ストリーミング時代の外側でこのアルバムを証明した。アティテュードとしてではなく、音楽そのものの強さによって。

手間をかけて聴きに行く価値がある音楽が、この時代にもちゃんとある。

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