グリーン・デイ (Green Day) おすすめ名盤『ドゥーキー (Dookie)』レビュー|90年代ポップ・パンクとメロコア人気の火付け役となった傑作

グリーン・デイ (Green Day) おすすめ名盤『ドゥーキー (Dookie)』レビュー|90年代ポップ・パンクとメロコア人気の火付け役となった傑作 Punk Rock / Pop Punk

94年のあの重苦しい空気——Nirvana以降の「絶望してナンボ」みたいなグランジ全盛期に、この3人が「そんなことより、暇すぎて死にそうなんだよ!」って笑いながら中指立てて飛び出してきた感じ。

その青臭いエネルギーが、何周回っても最高にかっこいい。

とはいえ、私は後追い世代なので、上の文章は単なる想像でしかないんだけど(笑)。

1994年にリリースされた3枚目のアルバム、メジャー移籍第一弾。プロデューサーにRob Cavalloを迎え、バークレーのFantasy Studiosで1993年に録音されました。

初週の売り上げはわずか9000枚で、Billboard Hot 200でも141位と出だしは地味。

しかしKROQでの放送をきっかけにラジオとMTVで火がつき、最終的にアメリカ国内でダイヤモンド認定(1000万枚以上)、ワールドワイドで2000万枚超を売り上げ、グラミー賞最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバムを受賞しました。

2024年には米国議会図書館の国家録音登録簿にも登録されています。

制作背景

Green DayがReprise Recordsに移籍することになったのは、ニュージャージー州トレントンのCity Gardensでのライブがきっかけでした。

ファンからインディー盤の入手が難しいという声が上がったことで、バンドはメジャー移籍を検討し始めます。

Geffen、Columbia、Repriseの3社による争奪戦が起きましたが、最終的にRob Cavalloとの相性でRepriseを選んだ——「みんなたぶんハイだったね(笑)。霧がかかったような消去法のプロセスだったけど、やりたいことははっきりしていた」とArmstrongは振り返っています。

メジャー移籍はリスクでもありました。

Bay Areaのパンク・シーン——とりわけ彼らが育ったGilman Streetコミュニティ——からは「裏切り者」として激しいバッシングを受けました。

ファンから怒りの手紙が届き、雑誌には批判が並んだ。しかしバンドはそれを気にしなかった——「パンクロックって、結局自分の信じることを貫くことじゃないの?」というのが彼らの返答です。

録音場所のFantasy Studiosは、JourneyやEn Vogueといったアーティストも使ってきた高級スタジオです。

Armstrongはそこを「70年代のコカインのノリ——マホガニーと奇妙な木材に囲まれた」と表現しています。

インディー時代の最初の2枚はわずか1900ドルで録音していたところに、今回は予算10万5000ドル——「一発屋で終わるかもしれない状況でその予算があった。スタジオに入るたびに何かが変わった感じがした」とArmstrongは言います。

録音の方針はCavalloが毎日バンドのリハーサルを観察し、曲が「完璧に体に入った」状態になるまで待ってからテープを回す、というものでした。

その甲斐あって、Armstrongのボーカル・トラッキングはわずか2日間、1曲あたり最大3テイクで完了した——「スタジオに閉じ込められたバンドの話をさんざん聞いてたから、とにかくサッと録って終わらせたかった」とArmstrongは語っています。

Armstrongが使ったギターは「Blue」と呼ばれる11歳のクリスマスにもらったFernandes製のStratocasterコピーただ1本で、セイモア・ダンカンのハムバッカーに換装しステッカーだらけにした一本です。

「She」のサビで切り替わる重厚な歪みはMarshallアンプ「Pete」から来ています。「とにかくでかい音からもっとでかい音へ——それだけだった」とArmstrongは説明しています。

音楽性

このアルバムのサウンドを一言で言えば「タイトで乾いた爆音」です。

ギターはジャリジャリしているけどコードの輪郭がはっきりしていて、Mike Dirntのベースが単なる伴奏を超えて「もう一本のリード楽器」みたいに暴れ回る。

Cavalloが最初に課した微妙なピッチのずらしが、あの独特の「前のめりな張り感」を生み出しています。

Tre Coolのドラムはパンクという枠に収まりきらない手数を持っていて、正確無比です。

スネアの一打一打に「意志」があるような、あのパキーンと抜ける音がアルバム全体のスピード感を支配している。

Cavalloは「全員があれほど上手いバンドだとは思っていなかった。曲を聴いた瞬間、一つひとつが欠点のない小さな宝石に聴こえた」と語っています。

リバーブで誤魔化さない生々しい空気感は、Fantasy Studiosの設計とCavalloのミックスの判断によるものです。

複雑なことは何もしていないはずなのに、三人の音がガチッと噛み合った瞬間の「これしかない!」という説得力がある。

あのアンサンブルの密度は、5年間バークレーの地下室でライブを重ねてきたバンドにしか出せない迫力です。

Armstrongの歌詞はスラムに近い借家での生活から直接引き出した、どこまでも正直な言葉で埋まっています。

Cavalloは「すべての歌詞は真実だ。すべての若い男女が感じていることの真実だ」と言いました。

明るいメロディで最悪な気分を歌う——その「深刻さを笑い飛ばす」感覚が、このアルバムの中毒性の正体だと思います。

楽曲解説

Burnout

アルバムのオープニング。1曲目から「燃え尽きた」なんて歌う自虐センスが最高です。

Armstrongは録音初日の緊張について「お菓子屋に迷い込んだ子どもみたいな感じだったね」と振り返っています。

ドラムのフィルが鳴った瞬間に、日常のイライラが全部どうでもよくなる。

ベースがオクターブで跳ねるたびにこっちの心拍数も上がる。わずか2分で完結するこの潔さ。

Longview

アルバムの先行シングルであり、KROQでの放送で火がついた曲。

あの伝説的なベースラインはDirntがアシッドでトリップしている最中に書いたもので、「Longview」のMVはArmstrongたちが実際に住んでいた散らかった家で撮影されました——汚いソファ、ゴミだらけのコーヒーテーブル、バンドのニキビまでくっきり映っていると後から笑いながら語っています。

あのベースのモタついた感じが、暇すぎて頭がおかしくなりそうな「倦怠感」を完璧に表現している。

そこからサビで爆発するダイナミクス。歌詞の内容は最低だけど、音の解放感は最高——このバランスこそ彼らの真骨頂です。

Welcome to Paradise

前作『Kerplunk』(1992年)の収録曲の再録版。スラム街を「パラダイス」と呼ぶ皮肉——Armstrongたちが実際に荒れた地区の安アパートに住んでいたときの実体験から書かれた曲です。

ベースソロのパートがより筋肉質になっていて、インディー時代より「武装した」感じがします。

ギターの歪みが壁みたいに迫ってきて、聴き終わると軽いスポーツをした後のような心地よい疲労感が残ります。

Basket Case

説明不要のアンセム。

ArmstrongはパニックアタックとADHDの症状について精神科を何軒も訪ねたが診断がつかず、「自分で自分を診断するために書いた」と語っています。

「am I just paranoid?」というラインの後の「Or am I just stoned?」という落とし方——シリアスなのに笑いで救う、Green Dayの文法がこの曲で完成されています。

パニック障害をテーマにしているのに、なんでこんなに全速力で走り抜けちゃうのか。

サビでボノ(U2)みたいに歌い上げたりしない、あのぶっきらぼうな叫びが、逆にもどかしい10代の心臓を直撃する。

When I Come Around

アルバムの中で唯一、少しだけ大人びた「夜の匂い」がする曲。

あのミュートを効かせたリフのループが心地よくて、ドライブ中に流すと最高にハマります。

Billboard Modern Rock Chartで7週間1位を記録した、アルバムから最も成功したシングル。

歌詞は自分勝手で責任から逃げる主人公の言い訳を正直に描いていて、Armstrongの元交際相手との関係がモデルになっていると言われています——彼女はアルバム完成前に別れてエクアドルへ旅立ったとか。

「ダサい自分」を隠さない誠実さが、Green Dayが愛される理由だと思います。

まとめ

米国議会図書館の登録文書の執筆を担当したIan Winwoodはこう書いています——「Dookieの下に宿る緻密な孤独と孤立のヴィネットは、その前に存在したどんな音楽にも引けを取らないほどの深さを持っている」。

Rolling Stone誌のCavalloのコメントも引用しておきます——「あなたはこの男が天才だと気づいていますか?Dookieのすべての歌詞は真実だ。すべての若い男女の真実だ」。

結局、『Dookie』のすごさは、パンクという「怒り」の音楽を誰もが口ずさめる「ポップ」に変えたことだけじゃないと思うんです。

退屈で、情けなくて、不安でいっぱいな「僕ら」の気持ちを、一番デカい音で肯定してくれた。それがこのアルバムの魔法だと思います。

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