ブリンク182(Blink-182)おすすめ名盤『Enema of the State』レビュー|凄腕ドラマー、トラヴィス・バーカー大活躍のおバカなポップ・パンク/メロコア必聴盤

ブリンク182(Blink-182)おすすめ名盤『Enema of the State』レビュー|凄腕ドラマー、トラヴィス・バーカー大活躍のおバカなポップ・パンク/メロコア必聴盤 Punk Rock / Pop Punk

Blink-182の『Enema of the State』は、1999年にリリースされたバンドの3枚目のスタジオ・アルバムです。プロデュースはJerry Finn。

前作から一段と磨き上げられたポップネスと、Travis Barkerという新しいドラムの登場によって、バンドはこの作品で別次元の場所へと跳びました。

収録時間はたった33分。

でも、その短さの中に10代の頃に抱えていた「全能感」と「惨めさ」が、これでもかと凝縮されています。

世紀末の重苦しさを一瞬で吹き飛ばしたのは、裸で街中を駆け回る3人のポップ・パンク・バンドだった。

制作背景

バンドにとって最大の転機は、前任ドラマーのScott Raylorが1998年に解雇されたことです。

アルコール問題による影響がツアーにまで及び、DeLongeとHoppusはBarkerを後任に指名した。

Barkerはその時点でAquabatsのドラマーとして同ツアーに参加していて、Blink-182から「本番まで45分しかない」と頼まれ、その場で20曲のセットリストを習得して演奏した。

「We’ve never sounded better. We love this. You gotta play in our band」——バンドからそう言われたとBarkerは振り返っています。

Barkerの加入が正式に決まり、DeLongeとHoppusは「彼に追いつくために自分たちも演奏のレベルを上げなければと思った」と語っています。

録音は1999年1月から3月にかけて行われました。

プロデューサーのFinnはGreen Dayの『Dookie』を手がけた人物で、Hoppusは「PennywiseやJawbreakerでの仕事ぶりが好きだった」と明かしています。

Finnはより良いテイクを徹底的に要求する人物で、Hoppusは「パンクロックを深く理解しながら、ポップなサウンドの作り方も知っていた」と語っています。

Finnはアンプやエフェクター類を大量に持ち込み、それまでレンタルに頼っていたバンドに初めて豊富な選択肢を与えました。

Barkerにとっては「ブラックコーヒーとマルボロで乗り切ったレコーディング」と記憶されています。

アルバムタイトルの「Enema(エネマ)」は英語で「浣腸」という意味です。

DeLongeがダイエットのためにエネマを使っていたことから命名されたとBarkerは証言しています。ジャケット撮影のフォトグラファーDavid Goldmanは「アルバムの仮タイトルが『Turn Your Head and Cough』だったため、あのグローブのアイデアを思いついた」と明かしています。

音楽性

このアルバムの最大の個性は、間違いなくTravis Barkerのドラムです。

Rolling Stoneは彼を「パンク初のスーパースター・ドラマー」と称しています。ただしそれは単に速い、うるさい、という話ではない。

Barkerがずば抜けているのは、ハーフタイム、ノーマルタイム、ダブルタイムをひとつの曲の中でシームレスに切り替える能力です。

アルバム冒頭「Dumpweed」のヴァース、プレコーラス、コーラスと進む中で、スネアの位置が何度も変化する。

それが「ただのポップ・パンクの曲」を「固有の何か」に変えています。

もうひとつの特徴はマーチングバンド出身の素地です。

高校でジャズアンサンブルとマーチングバンドで鍛えたルーディメンツ(基礎打法)が、「All the Small Things」や「Going Away to College」のブリッジのスネアパターンに直接反映されています。

ここだけ聴いても、Barkerが普通のポップ・パンクのドラマーではないとわかります。

Finnのプロデュースワークも見逃せません。アナログ・テープを使ったウォームな質感を徹底的に追求し、スネアの音色にも執着したFinnは、曲ごとに異なるスネアを使い分けています。

この「手間をかけたポップ・サウンド」こそが、アルバムを単純な安売りポップ・パンクと一線引かせている。

楽曲解説

Dumpweed

幕開けの1秒目からフルスロットル。

Barkerのドラムがハーフタイムとダブルタイムを行き来しながら、失恋の怒りをぶちまけていく。

このアルバムがどんなものかを、最初の数十秒で完全に説明してしまう曲です。「説明しますよ」という顔をしていないのに、してしまっている。その無自覚さがいい。

Going Away to College

「All the Small Things」や「What’s My Age Again?」の陰に隠れがちですが、私はこの曲がアルバムの中で最も好きです。

遠距離恋愛になる不安と「このままでいられるのか」という問いが、メロディとこれほど自然に結びついている曲は多くない。

Barkerのブリッジのスネアパターンもここで光ります。感情の昂りに合わせてリズムが変形していくような感覚があります。

What’s My Age Again?

バンドのメジャー・ブレイクを決定づけたシングル。

「23歳にもなって、誰も俺のことを好きじゃない」という、あまりにも正直なフレーズが光る。

大人になれない、なりたくない。その焦燥感を、裸で走るミュージックビデオという最高のユーモアで包み込んだ曲です。

笑えるのに、刺さる。そのバランスがBlink-182というバンドそのものだと思っています。

Adam’s Song

おバカな曲が並ぶ中で、この曲だけ空気が違います。

Hoppusがツアー中の孤独と自殺念慮をテーマに書いたバラードで、今や「メンタルヘルスを正面から歌った重要作」として再評価されています。

「I never conquered, rarely came」という出だしの一文に、その後の6分間のすべてが入っています。大げさではなく、本当にそう感じます。

All the Small Things

アルバムの中で最も広く知られたシングル。「Na-na-na」だけで数万人をひとつにする、シンプルさの魔法です。

ブリッジのスネアドラムのルーディメンツが特に際立っていて、ここだけ聴いてもBarkerが単純なポップ・パンクのドラマーではないことがわかります。

ポップスとして完璧に機能しながら、裏でこれほど精巧なことをやっている。それがこのアルバム全体に言えることでもある。

まとめ

「Enema(浣腸)」というタイトルをつけ、裸で走るミュージックビデオを撮ったバンドが、世界で1500万枚以上を売った。

その事実がBlink-182というバンドのすべてを物語っています。

ふざけることと、真剣であることは矛盾しない。このアルバムはその証明です。

33分間、そのことを忘れさせません。

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