Underworldの『Second Toughest in the Infants』は、1996年にJunior Boy’s OwnからリリースされたUnderworldのMK2ラインナップ——Karl Hyde、Rick Smith、Darren Emersonの3人——による2枚目のアルバムです。
全8曲で73分超え。数字だけ見ると重たいけれど、一度再生ボタンを押せば、時間の感覚なんて最初からなかったかのように溶けてしまう。
1996年、世の中が『Trainspotting』と「Born Slippy .NUXX」の狂騒に沸いていた裏側で、彼らはこんなにも美しくて、得体の知れない音の長編小説を編み上げていた。
NMEはUnderworldを「リズムの踏み心地が滑らかで、西洋のグルーヴ支配に向けた探求を颯爽と続けている」と評し、Melody Makerは本作を1996年の年間5位に選んでいます。
AllMusicのPaul Simpsonは後年「Underworldが創造的な頂点にあったことを示す、ある時代の重要な証言として今も残る」と書いており、2006年のMojo誌「モダン・クラシック96選」にも選出されました。
制作背景
このアルバムは「プラグイン一切なし、コンプレッサーなし、ゲートなし」で作られています。
Smithは2010年のMusicRadarのインタビューでこう語っています。「録音はすべてソニーのポータブルDATマシン(バッテリー駆動)で行った。ハードドライブ録音はなかった——後でトラックを組み上げるためにレンタルしたが。ミックスは基本的にすべてライブで、コンソールを通してMIDIとテープを走らせながら、エフェクトもコンソールに生で入れた。どうやってやったのか、自分でも分からない」と。
主要機材はRoland TR-909ドラムマシン、Roland VP-330ボコーダー、Nord Leadシンセサイザー、Yamaha DX7 Mk1、ARP 2600、OSCar、2台のYamaha SPX90(片方がステレオ・ピッチ、もう片方がステレオ・ディレイ)、Roland SD-3000モノ・ディレイ・ラインです。
TR-909はUnderworldの楽曲の80パーセントに使われており、「909サウンドが私たちのリズムの根幹にある」とSmithは語っています(Sound on Sound誌)。
「Juanita」でとくに大きく聴こえるRoland VP-330ボコーダーは、UltravoxのMidge Ureから購入したもの。Smithは「Karlの声との相互作用が好きだ。ボコーダーとしてほとんど知覚できないほど薄く使うのが好き」と説明しています(Roland Australiaインタビュー)。
Emersonは当時のクラブ・シーンの最前線にいるDJとして音とエネルギーを持ち込み、Hydeがギターのリフと歌詞を書き、Smithがエンジニアリングとプロダクションとキーボードを担った。
Dazed and Confused誌はHydeのボーカル・スタイルを「GinsbergとMark E. Smithの言葉のぶつかり合い」と評しており、HydeはUrb誌に「機械と一緒にギターを弾くのが好きなのは、人間が見えるからだ。機械がぴったり正確なら、こちらはあちこち彷徨える」と語っています。
音楽性
このアルバムで目立つのは、長大な組曲形式と精密なダイナミクスの制御です。
AllMusicのSteve Hueyは「長さのある叙事詩を巧みに組み立て、生き生きとしたメロディのテーマとリズム・パターンを交差させながら、緻密なブレイクビーツから落ち着いたダウンテンポへとシームレスに移行する」と書いており、その観察は正確だと感じます。
前作『Dubnobasswithmyheadman』がクラブ寄りだったのに対し、本作はドラムンベース的なリズム、スライド・ギターのループ、アンビエントに近い余韻まで、より多彩なアプローチが取られています。
「評論家はテクノとロックの融合なんて小難しく言うけれど」と思っていた時期もありました。でも今は少し違う言い方をしたい——機械の冷たさと人間の体温が同じ温度になる瞬間が、このアルバムには確かにある。
Hydeのボーカルが詩のような断片として漂い、ビートの中に埋もれていく。歌詞が意味を解読させるものではなく、感触として届くように設計されている。
Smithが「16小節ごとに快楽ゾーンに当てにいかない、小さな変化の中でずっと大きく感じる音楽を作りたかった」と語ったその方針が、73分という長さを「短い」と感じさせる理由だと思います。
楽曲解説
Juanita : Kiteless : To Dream of Love
冒頭からして、もう凄まじい作り。3つのパートが互いに交差しながら16分間展開する組曲で、まったく飽きがこない。
タイトルにスラッシュではなくコロンが使われているのは「各パートが曲中の様々な点で互いに交差するから」とのことで、その設計通りの体験ができます。
制作にあたってSmithはこう語っています。「私は本当にクラブに出かけて楽しんでいた。目を閉じてコーナーでみっともなく踊りながら、あのトランス状態が好きだった。小さな変化でも大きく感じられる音楽が作りたかった。完成したら17分になっていたが、それがまったく自然に感じた」と(MusicRadar誌)。
Roland VP-330ボコーダーが「Juanita」では他の曲より大きく前面に出ており、Hydeの声とボコーダーが溶け合う質感はこのアルバムで最も密度高く聴けます。
執拗なビートの反復の中で、Hydeの「薄い紙の翼」という独り言のような断片が頭にこびりついて離れなくなる。
最後は車の色を高速で読み上げるHydeの声がピッチを上げられて繰り返され、アンビエントに着地する——このアルバムが時間の感覚を消すことを得意としているのが、最初の1曲でもう分かります。
Banstyle/Sappys Curry
Smithが「LTJ BukemsやGoldieの『Timeless』のようなドラムンベースに完全に影響を受けた」と語る曲。「Banstyle」がラウンジーなドラムンベース・トラックで、「Sappy’s Curry」はそのダウンテンポ版として並置されています——二つの気温が一枚の曲に収まっている。
不意に差し込まれるHydeのアコースティック・ギターとサイケデリックなカントリー的フレーズの生々しさが、ドラムンベースの性急なリズムと混ざり合う。
Smithが「私たちは互いに競合する音楽的影響をアルバムに持ち込んだ、すべての音楽を愛していた」と語った通りで、機械の冷たさと人間の体温がぐちゃぐちゃに混ざり合った手触りをもっとも直接的に体験できる曲です。
Confusion The Waitress
容赦ないビートの嵐の中で、Hydeのボーカルが耳のすぐ隣で囁くように届く。
1001 Albums You Must Hear Before You Dieのレビューはこの曲を「アルバムの心臓部」と呼び、「ドラマに満ちた劇場だ」と書いており、私もそれに近い気持ちがあります。
ゲルマン的なテクノとジャングルのスネア・スナップの上でHydeの声が淡々と物語を紡ぐ——長尺のポエトリーと攻撃的なビートが噛み合う瞬間がこの曲には何度も来て、そのたびに少し前のめりになる。
Rowla
アシッド・テクノ的な質感を持つ純インストゥルメンタル。Smithはこう語っています。「当時いいハードハウスが流れていた。アシッドハウスが少し古臭くなってきていたが、私はまだその感触が好きだった。Roland 303が唸るあの感じを、Nord Leadシンセでやろうとした——前作では持っていなかった楽器で。ゆっくりと、時間をかけて、攻撃的な曲を作ろうとした」と(MusicRadar誌)。
ただSmithは「アルバム版は少し物足りない。ライブの方がもっと生々しく轟く」とも語っており、その正直さが好ましい。
実際、ライブ版のRowlaは別の生き物のように荒れ狂います。
Pearl’s Girl
Underworldで数少ないブレイクビーツを使った曲のひとつ。スピーカーが壊れるんじゃないかというくらいの猛烈なビートで、Hydeの「リオハ、リオハ……」という呪文のような反復が全体を貫く。
フロアの熱気と、明け方の冷たい空気が同時に押し寄せてくるような感覚がある。
タイトルはイギリスの競馬場で出会ったグレイハウンド犬の名前に由来しており、「Sappy’s Curry」「Born Slippy」も同じ日に出会った犬たちの名前です——その日のレースで1着・2着・3着に入った順番とのこと。
犬の名前が、1996年最大のダンス・アンセムと、このアルバムのタイトルと、その両方に繋がっているという事実が可笑しい。
Blueski
アルバムで唯一6分を切る曲。Smithが「Karlの生のギターとループを中心にした、シンプルで美しい曲」と呼んでいます(MusicRadar誌)。
8曲中でただひとつ「短い」と感じる3分の小品で、嵐のような前後の曲の間で、静かに空気を入れ替える役割を担っています。
スチールギターの音が幽かに漂う、このアルバムの中で最も青い場所。
Stagger
アルバムを締めくくる静かな余韻。Smithは制作日を覚えています。「Karlと私は寝室のスタジオにいた。どちらも仕事をしたくなかった。疲れていてうんざりしていたが、Karlが『来なくても半時間でも何か出そう』と言った。その場で生まれた」と(MusicRadar誌)。
嵐のようなビートの後に訪れる、あまりに寂しくて、でも優しい終わり方。夜通しの旅を終えて、ようやくたどり着いた家のような安心感があります。
2015年にリマスターされた版では低音がさらに深くなっており、身を委ねるとあの頃の熱量と、今の静かな肯定感が何の違和感もなく混ざり合う——このアルバムがそういう時間の持ち方を許してくれるのは、きっとこれからも変わらないと思います。
まとめ
仕事で疲れた夜や、一人で静かに思考を整理したいときに、今でもこのアルバムを手に取ります。
Sony DATマシンとRoland TR-909と、プラグイン一切なしで作られた73分が、今も古びていない。
全8曲という長さは、聴き終えた後にむしろ短く感じる——それがこのアルバムの最も正確な説明かもしれません。
ちなみにアルバム・タイトル『Second Toughest in the Infants』は、Smithの6歳の甥のSimon Prosserが幼稚園(infant school)での進み具合を聞かれたときに「ぼくはクラスで2番目にタフだ」と答えた言葉に由来します。
それを『弐番目のタフガキ』と訳す本邦の和訳者のセンス、私は嫌いじゃありません。

