イーグルス(Eagles)おすすめ名盤『Hotel California』レビュー|フラメンコ由来のコード進行、2日間で完成したギターソロ——ロック史上最高の名曲の秘密に迫る

イーグルス(Eagles)おすすめ名盤『Hotel California』レビュー|フラメンコ由来のコード進行、2日間で完成したギターソロ——ロック史上最高の名曲の秘密に迫る Classic Rock
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Eaglesの『Hotel California』は、1976年にリリースされた5枚目のスタジオ・アルバム。。

このアルバムが録音されていたマイアミのスタジオ、隣の部屋では別のバンドが同時に録音していた。Black Sabbathだ。

爆音すぎて重低音がスタジオの壁をすり抜けてくるせいで、Eaglesは何度も録音を中断せざるを得なかった。

カリフォルニアの夕暮れと退廃をあの美しいハーモニーで歌ったアルバムの裏側に、サバスの轟音があったというのが好きだ。

前作のヒットで絶頂にいたはずのバンドに、深い倦怠感が漂っていた。「Peaceful Easy Feeling」を書いたバンドが、同じ場所から「Hotel California」を書いた。そのギャップがこのアルバムのすべてだと思う。

楽曲解説

Hotel California

Don Felderがマリブのビーチハウスのソファで12弦ギターを弾きながら作ったデモテープが起点になった。

仮タイトルは「Mexican Reggae」——あの荘厳なイントロが、もともとそう呼ばれていたとは誰も想像しないだろう。

コード進行——Bm – F#7 – A – E – G – D – Em – F#7——は、ポップ・ロックではほとんど使われない珍しい進行だ。

フラメンコの「スパニッシュ・プログレッション」と呼ばれる技法に近く、バロック時代のシャコンヌにまで遡ることができる。

Bマイナーキーで本来あるべきV和音はF#マイナーのはずだが、この曲はF#7(長調の属七和音)を使うハーモニック・マイナーの手法を取る。この半音が強く主音のBmへ引き戻す力を持つ。それが曲全体に「逃れられない引力」の感覚を生む。

「You can check out any time you like, but you can never leave」という歌詞と、和音の構造が同じ感覚を作り出しています。

アレンジの設計も精巧だ。イントロは左右に振り分けられた2本の12弦アコースティックギターとベースだけで始まり、ドラムの入らない静寂の中でコード進行が提示される。

そこへ徐々に楽器が加わり、各ヴァースごとにハーモニーギターラインが一本ずつ増えていく。6分を超える曲が「長い」と感じさせないのは、この段階的な音の密度の増加が聴き手を引き込み続けるからだ。

有名なエンディングのツインギターソロには後日談がある。

スタジオ本番でFelderとWalshが新しいソロを弾き始めたとき、Don Henleyが止めた。「それは違う。デモと同じに弾け」。Felderはカリフォルニアのハウスキーパーにデモカセットを探させ、電話口でそのテープを再生してもらい、1年以上前に自分が弾いたフレーズを聴き直して覚え直した。

ただし実際の録音はもっと複雑だった。プロデューサーはこう語っています。「FelderとWalshを呼んで、和声パートを一コードずつ積み上げながら作っていった。2日間の作業で、最高の時間だった」と。

最終的にマスターテープには33箇所の編集点がある。あのソロは即興でも完全な事前設計でもなく、二人が2日間でコードごとに積み上げたものです。

「6分の曲で、イントロだけで1分、途中でドラムが消え、最後に2分のギターソロがある。シングルとして絶対に間違ったフォーマットだ」とFelderは語っています。

それでもバンドはレーベルの短縮要求を拒否した。その判断が正しかったことは、半世紀近く聴き継がれていることが証明しています。

New Kid in Town

アルバムからの最初のシングルで、Billboard Hot 100で1位を記録した。

表向きは恋愛の歌に聞こえるが、実はEaglesが絶頂期にして「自分たちもいつか時代遅れになる」という不安を歌った曲だ。成功の真っ只中で、すでに終わりを想像していた。

和声的に面白いのはコーラスの設計で、Eメジャーを主軸にしながらC#マイナーへの転調を繰り返す。

長調と平行短調の間を行き来するこの動きが、「幸福と不安の同居」という感情を音楽的に表現しているように聴こえる。コーラスの3声ハーモニーも計算されていて、西海岸のカントリーロックで磨いてきた「声のブレンド」の技術が最高点に達する曲です。

Life in the Fast Lane

Glenn FreyがドラッグディーラーとLAのフリーウェイをぶっ飛ばしていたとき、スピードを落とすよう頼んだら「これが人生ってもんだろ」と返された。その一言が曲名になった。そこへJoe Walshがリハーサルで何気なく弾いたリフが合わさった。

計画されていない曲の方が、なぜか体に刺さる。

Walshのリフがブルーススケール上で動く一方、Henleyが裏拍を強調するシャッフルビートを叩く——この「表と裏の緊張関係」がこの曲の異様な疾走感を生んでいます。

Wasted Time

Don Henleyが当時交際していた女性との別れをもとに書いた。アルバムの中で最も「個人的な傷」に近い一曲。

オーケストラのアレンジに包まれているせいで、最初は壮大なバラードに聞こえる。でも何度か聴くと、その下にある静かな痛みの方が前に出てくる。

ストリングスはボーカルラインの合間に短いカウンターメロディを挟んでいて、ストリングスとボーカルが「会話」をするような響きになっています。

まとめ

このアルバムはパンク元年の1976年にリリースされた。Sex Pistolsの「Anarchy in the UK」と同じ年だ。

片やロックの破壊、片やその退廃の美しい記録。どちらも同じ時代の産物です。

フラメンコ由来のコード進行、2日間でコードごとに積み上げたツインギターソロ、段階的に密度を増す3声のハーモニー——これだけの設計が、「Dark desert highway」という一行で始まる曲の中に収まっている。

Don Henleyはこのアルバムについてこう語っています。「アメリカンドリームの暗い裏側についての作品だ。過剰さについて、ナルシシズムについて、音楽ビジネスについて」と。

あのホテルからのチェックアウトは、今も誰にもできていない。

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