サウンドガーデン(Soundgarden)おすすめ名盤『Superunknown』レビュー|クリス・コーネルの絶唱とヘヴィなリフが交差する、グランジ金字塔の真実

サウンドガーデン(Soundgarden)おすすめ名盤『Superunknown』レビュー|クリス・コーネルの絶唱とヘヴィなリフが交差する、グランジ金字塔の真実 Alternative Rock / Grunge

Soundgardenの『Superunknown』(1994年)のタイトルの由来が好きだ。

Cornellがある朝二日酔いの状態で、シアトルの子ども向けテレビ番組のキャラクター「J.P. Patches」の映像作品「Superklown」のカセットラベルをぼんやり眺めていたら、「Superunknown」に見えた。それがそのままアルバムのタイトルになった。

A&M Recordsから1994年にリリースされた、Chris Cornell(ボーカル・ギター)、Kim Thayil(ギター)、Ben Shepherd(ベース)、Matt Cameron(ドラム)による4thアルバムで、Michael Beinhornがプロデュースを担当しました。

デビュー週にBillboard 200で1位を獲得し、初週310,000枚を売り上げた。「Spoonman」でグラミー賞のBest Metal Performance、「Black Hole Sun」でBest Hard Rock Performanceを受賞しました。

酔っ払いの誤読が、90年代グランジを代表する名盤の顔になったわけです。

制作背景

1984年の結成から数えると、すでに10年のキャリアを持っていたSoundgardenは、このアルバムを「自分たちが10年間解き放つのを待っていた作品」として作った。

Pearl Jamがすでに2,000万枚を売り上げ、シアトルのバンドたちがどんどん名声を手にしていく中で、Soundgardenだけが「なぜか最後に残された」形になっていた。その緊張感がアルバム全体に滲んでいるように思います。

プロデューサーのBeinhornとバンドの関係は終始緊張していた。

Beinhornの「何十テイクも録り直す」手法がバンドの「2〜3テイクで決める」スタイルと衝突し、特にCornellは自分のボーカルを監視されることに強い不快感を示した。「俺たちはただそいつからレコードを取り上げた」とCornellは後に語っています。

それでもBeinhornがもたらしたものは大きく、「Black Hole Sun」の録音前にFrank Sinatraを聴かせてボーカルのアプローチを変えることを促した。

「Spoonman」の着想はPearl JamのベーシストJeff Amentが映画『Singles』用に架空のバンドの曲名候補として書いたリストから来ていて、Cornellはそのリストを使って実際に曲を書くことを自らの挑戦として受け入れた。

曲中でスプーンを演奏しているのはシアトルの路上ミュージシャンArtis the Spoonmanで、本人が参加しています。

「Like Suicide」は、Cornellが自宅の窓に激突して首の骨を折ったコマツグミを安楽死させて庭に埋めた後、地下室に戻ったときに言葉が出てきた——そのエピソードはアルバムの成り立ちとして最もよく知られたものの一つです。

同日リリースのNine Inch Nails『The Downward Spiral』(初週118,000枚)を大差で退けての1位獲得だった。Trent Reznorは後にこの差に傷ついたと認めているが、CornellとReznorは2014年のジョイント・ツアーで関係を修復しています。

音楽性

Cornellが影響を受けたアーティストとして繰り返し挙げるのはThe Beatles、Led Zeppelin、Pink Floyd(特にSyd Barrett期)の3組です。

「Black Hole Sun」について「あの曲を歌うとき、ビートルズとレッド・ツェッペリンとシド・バレット時代のピンク・フロイドの要素を感じる」とCornellは語っていて、ThayilはGuitar World誌で「自分たちの魂の奥底にはRingo(Starr)がいる——John LennonやGeorge Harrisonだと言いたいところだが、本当に深く見ると、Ringoが出てくる」と話しています。

和声的に見ると、このアルバムはヘヴィメタルの重厚さとポップ・メロディの親しみやすさを同じ曲の中で共存させる設計が随所に現れています。

「Black Hole Sun」は4/4拍子を基調としながら、ブリッジで9/8に移行する——その時間感覚の微妙なずれが「どこか不吉な甘さ」の正体のひとつです。「Fell on Black Days」は6/4拍子で書かれていて、4/4で予測するリスナーの体を微妙に揺さぶり続ける。

「Spoonman」は7/4と4/4を交互に組み合わせた構造で、Thayilは「拍子を考えたのは書き上げた後だった。変拍子は全くの偶然だ」と語っています。

Cornellのボーカル・スタイルはこのアルバムでキャリア最大の振れ幅を見せています。

Beinhornは「Cornellには2種類の声域があり、それぞれ別のマイクで録音する必要があった。高音を歌うとき、彼は地球上のほぼ誰よりも強くハードに歌う。文字通りコンデンサーマイクを何本もつぶした——そんな経験は一度もなかった」とBillboard誌に語っています。

低音域では囁くような親密さを持ち、高音域では会場全体を圧倒する轟音に変わる。ツアー後に声帯を深刻に傷めたことが後に判明していて、あの強度がいかに限界に近いところで生まれたかを示している。

楽曲解説

Fell on Black Days

アルバムの3曲目。「人生がうまくいっていて、充実しているはずなのに、気づいたら極度の不幸の中にいる」という感覚を描いたものだとCornellは語っています。

理由もなく黒い日々——誰にでも覚えがあるはずのその感覚がそのまま音になっています。

6/4拍子で書かれていて、4/4で聴いているリスナーの身体感覚を微妙にずらし続ける構造です。シングルとしてリリースされ、Mainstream RockとModern Rock両チャートに入りました。

Black Hole Sun

アルバム7曲目。「シュールで難解な言葉の絵画」とCornellは表現しています。

バンド自身は「まさかシングルになるとは」と思っていたと複数のメンバーが語っていて、計算なしに生まれた曲の自由さが音に宿っています。

録音前にBeinhornがCornellにFrank Sinatraを聴かせたのはこの曲のためで、「声でどこまで柔らかく入れるか」を探らせました。

グラミー賞のBest Hard Rock Performanceを受賞し、MVはMTV Video Music AwardsのBest Metal/Hard Rock Videoを受賞した名曲。

Spoonman

アルバム8曲目にして、Beinhornによれば「アルバムで最初に完成した曲」。

路上ミュージシャンArtis the Spoonmanが実際にスプーンを叩いて演奏したパーカッションが曲の核になっています。Jeff Amentが映画用に書いたタイトル候補リストから着想を得て、Cornellが実際の曲を書いた。

7/4と4/4を交互に組み合わせた変拍子が骨格で、ThayilはドロップDチューニングを使っています。グラミー賞のBest Metal Performanceを受賞しました。

Cornellは「あの曲はArtisが何者であるかと、人々が彼をどう見るかという逆説について書いた」と語っています。

The Day I Tried to Live

うつや引きこもりの傾向から抜け出そうとする試みを歌った10曲目。「生きようとした日」というタイトルの重さに、聴くたびに少し息が詰まります。

Cornellのボーカルがアルバム中でもっともLed Zeppelin的な迫力を帯びる瞬間がある。

EEBBBeというユニークなチューニングを使っていて、7/8と4/4が交互に現れる変拍子構造です。「足場が定まらないまま前進している」感触が歌詞のテーマと対応している。

Cameronのドラムがその切り替えを自然に処理していて、変拍子とは気づかずに聴いている人も多いはずです。

Like Suicide

アルバムの最後を飾る15曲目。Cornellが自宅の窓ガラスに激突して首の骨を折ったコマツグミを安楽死させて庭に埋め、地下室に戻ったときに言葉が出てきた。知ってから聴くと、その静かな重さがまた違って聞こえます。

アルバム最長曲(約9分)で、轟音が全部収まった後に残る「余韻」として置かれている。Cornellのボーカルがアルバム中で最も低く、最も親密に語りかける瞬間のひとつです。

このアルバムがリリースされたのは、Kurt Cobainが亡くなるちょうど1ヶ月前だった。Cornellも2017年に亡くなった今、この静かな9分間はまた別の重さで聴こえてくる。

まとめ

70分聴き終えたあとに残るのは、不思議と清々しい疲労感だ。自分の中の「知らない場所」を、誰かに一緒に歩いてもらったような感覚、とでも言えばいいか。

酔っ払いの誤読から生まれたタイトルが偶然にしては出来すぎていると思う理由が、聴けばわかる。

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