ブリアル(Burial)おすすめ名盤『Untrue』レビュー|ダブステップ最重要作——James Blake、The xx、FKA twigsの源流をたどると、この1枚の「声」に行き着く

ブリアル(Burial)おすすめ名盤『Untrue』レビュー|ダブステップ最重要作——James Blake、The xx、FKA twigsの源流をたどると、この1枚の「声」に行き着く Drum N' Bass / Dubstep

Burialの『Untrue』は、2007年11月5日にHyperdubからリリースされた2作目のアルバムだ。全13曲、総収録時間約50分。制作・プロデュースはBurial——すなわちWilliam Bevan——その1人だけ。

ソフトウェアは古びたSony Sound Forge。ハードウェアは「煙が漏れることもあった」(Burial本人の言葉)くたびれたパソコン1台。その組み合わせが、21世紀の電子音楽でもっとも広く語り継がれる1枚を生んだ。

Pitchforkの批評家Simon Reynoldsは2017年に「今世紀でもっとも重要な電子音楽アルバム」と評した。大げさに聞こえるかもしれない。でも、James Blake、The xx、FKA twigs——それぞれのキャリアの根を掘っていくと、必ずこのアルバムの「声」に突き当たる。声のないアルバムなのに、声のことばかり話題になる。そういう1枚だ。

制作背景

Burialは1979年生まれ、サウス・ロンドン出身。十代の頃、兄がジャングルのパーティーから持ち帰るレコードに耳を傾けながら眠りにつく日々を過ごした。自分でレイヴに行ける年齢ではなかった。

その「遠くから聴こえてくる音楽」への感覚——会場にいた者の記憶ではなく、会場の外にいた者の想像——がBurialのサウンドの核にある。

2006年のセルフタイトル・デビューアルバムはThe Wireの年間最優秀アルバムに選ばれ、Burialへの期待は急速に高まった。それが重圧になった。The Wire誌のMark Fisherとのインタビューで彼はこう語っています。「時間をかけすぎた。全部うまくいかなかった」と。

転機は母親の電話だった。行き詰まったBurialは電話して状況を話した。母親はこう言った。「曲を作りなさい。みんなのことは無視して、気にしなくていい」。Burialはその20分後に電話をかけ直した——「Archangel」を書き終えたと言って。

それまでの曲を全部捨て、Sound Forgeだけを使って2週間でアルバムを書き直した。それが『Untrue』だ。

Burialはアルバムリリース時、まだ匿名だった。2008年8月にBurialがMyspaceで自ら確認した。Mercury Prizeのノミネートが決まった後のことだった。「私の名前はWill Bevan、サウス・ロンドン出身で、静かにしていたい」——それがBurialが自分自身について公に書いた、ほぼ唯一の文章だ。

音楽性

このアルバムのビートは、シーケンサーを使わずに作られた。BurialはSound Forgeで波形を目で見ながら耳で調整してゆく。グリッドに縛られていないから、タイミングはわずかにずれ、ヒットとヒットの間に微小な息継ぎがある。

Burialはこう語っています。「ドラムが完璧なタイミングで鳴ると、何かが失われる。ひどい音になる」と。

典型的な構造は2ステップ・ガレージから来ているが、スネアの落ちる位置が通常の裏拍ではなく一拍半や二拍半のところに置かれ、リズムが「滑る」感覚を生む。これにBurialの手動タイミング調整が重なると、聴き手はビートの「どこにいるか」を常に少しだけ見失う。その感覚が、このアルバムを夢うつつの夜明け前のように聴かせる。

各曲は大きく流れるように展開し、明確なサビを持たない。音の層が少しずつ加わり、あるいは剥がれていくことで曲が動く。セクションが明確に終わる前に次が始まり、「ここで曲が変わった」と気づくことが難しい。アルバム全体が1本の長いグラデーションのように連なっています。

声の扱い方がこのアルバムの中心だ。BurialはR&BのアカペラをSound Forgeでピッチシフトし、男性の声を高く、女性の声を低くして「中性化」させた。Pitchforkのフィリップ・シャーバーンはこの声について「男でも女でもあり、どちらでもない」と書いた。

Burialはこう説明しています。「セッション・シンガーを呼んでドライに歌わせることはできない。だから友達に電話口で歌ってもらうか、アカペラをサンプリングして、一語一語を切り貼りして新しいフレーズを作る」と。歌詞があるように聴こえて、歌詞でないものが多い。Burialの「声」は、言葉を届けるのではなく感触を届ける。

後続への影響は、ジャンルの名前がついた形でやってきた。「ポスト・ダブステップ」と呼ばれるムーブメントがUKに生まれ、James Blake、Mount Kimbie、Jamie xxといったアーティストが連なった。The xxのデビューアルバム(2009年)は、Burialと同じリバーブの使い方——物理的な空間に対応しない、浮遊した残響——を共有しています。FKA twigsのピッチシフトされた声の扱いもまた、Burialが開いた扉を通っている。

楽曲解説

Archangel

アルバムを代表する曲で、電子音楽全体の文脈でも最もよく知られる曲の一つだ。Ray Jの「One Wish」(2006年)のボーカルをピッチシフトし、単語単位で切り貼りして「Holding you / couldn’t be alone / loving you / couldn’t be alone」というフレーズを作った。

Burialは母親から電話を切ってから20分でこの曲を書いたと述べています。ビートは130BPM前後のガレージ・パターンだが、スネアの落ちる位置がずれており、聴いていると体がそのずれに合わせて揺れ始める。3分58秒。短い。それがまたいい。

Near Dark

アルバム3曲目。「Archangel」のほぐれかけた夜明けが、ここで一度暗さに戻る。ビートの中に、Metal Gear Solidのゲーム音——薬莢が床に落ちる音——がハイハットとして刻まれています。

曲の中盤に短いブレイクダウンがある。弦のような音の後に一拍の沈黙があって、薬莢のビートが戻ってくる。その戻り方が「ドロップ」でも「サビ」でもなく、ただ続いてくる感じ——これがBurialの構成の特徴だ。

Etched Headplate

アルバムで最もゆっくり動く曲の一つ。5分59秒。低く這うベースラインと、声のサンプルが長い残響の中に溶けていく。原曲を知っていても最初は気づかないほど変形されています。

この曲を聴いていると、音楽が「鳴っている」というより「染み出している」という感覚がある。深夜3時に誰もいない場所で聴くような曲だ、と私は感じる。

Shell of Light

アルバム9曲目。D’Angeloのボーカル・サンプルが曲全体を通じてループするが、最後のアウトロだけそのサンプルが消え、全く異なる質感に切り替わる。その最後の1分ほどが、アルバムの中で最も静かで美しい箇所の一つだ。

Radio 6MusicのDJ Mary Anne Hobbsは2007年にこの曲をオンエアする際にこう言った。「地球上で作られたとは思えない。遠い星からの電波のようだ」と。大げさでも何でもなかった、と今は思う。

Raver

アルバムを締めくくる4分59秒。タイトルが示す通り、レイヴへの言及が最も直接的な曲だ。しかしここに収められているのは、ダンスフロアで聴く音楽ではない。

Burialが兄の持ち帰ったレコードを通じて想像したレイヴの残像——終わった後の記憶、あるいは終わる前の予感——に近い。

曲が終わると、アルバムは静かに消える。「downcast euphoria(落ち着いた陶酔)」とHyperdubの紹介文が表現したその感触が、最後にここに集まってくる。ぴったりの言葉だ、と思う。

まとめ

『Untrue』は聴き手に何かを「させる」アルバムではない。引き込む、ともまた少し違う。気がつくと自分がその音の中にいる、という感覚がある。

煙が漏れるパソコンと古びたソフトウェア1本で作られた。セッション・ミュージシャンも、共同プロデューサーも、スタジオもない。Burialは夜になってから作り始め、夜が終わるまで作り続けた。その時間帯の色がそのままアルバムの色になっています。

声が聴こえる。誰の声かはわからない。

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