FKA twigs の『EUSEXUA』は、2025年1月24日にリリースされた3枚目のスタジオアルバムだ。前作『Magdalene』から5年ぶり。
「Eusexua」は twigs が自分で作った言葉で、「オーガズムの直前の瞬間——純粋な無と、純粋な集中が同時に訪れる状態」だという。アルバム全体が、その感覚を音として再現しようとしている。快楽の絶頂直前の緊張と解放——それがこのアルバムのテーマだ。
制作の背景には二つの出来事がある。一つは2023年10月、制作中の85曲分のデモが流出したこと。twigs は「しばらく新曲は出さない」と宣言し、制作を全面停止した。
しかし数ヶ月後、Koreless とともに一から作り直すことを決断した。流出という危機が、結果的により研ぎ澄まされた作品を生んだことになる。
もう一つの出発点は、映画『ザ・クロウ』の撮影でプラハに滞在中、深夜のテクノクラブに通い詰めた体験だ。「ダンス・ミュージックが私に与えてくれる感覚へのラブレター」と twigs は表現している。
音楽性
前作『Magdalene』が内省的な痛みと喪失を軸にしていたのに対し、今作は肉体と快楽と解放へ向かっている。テーマの転換がそのままサウンドの転換になっていて、エレクトロニックの密度が増し、ダンスフロアとアート・ポップの境界線が消えた。
twigs のボーカルがこのアルバムの核だ。Pitchfork が「Björk と Kate Bush のボーカルに近い」と評した「Sticky」での処理——声がシンセと溶け合い、楽器なのか人声なのか判別できなくなる瞬間がある。
タイトル曲では濾過されたシンセラインの上を声が漂い、「Drums of Death」では G-Dragon のボーカルサンプルと衝突しながら、意図的にノイズを最大化する方向で仕上げられた。どこをとってもダンスフロアとアート・ポップの境界線がない。
プロデュースは twigs 自身と Koreless(Lewis Roberts)が中心で、二人はすべての曲のクレジットに名を連ねる唯一の存在だ。
Koreless はこう語っている。「ヒット・アルバムを作ろうとは思っていなかった。twigs は twigs であることで愛されている——自分が正しいと思うことをやるのが一番だ」。
レコーディングはライティング・キャンプ形式で進められ、「歌詞がまだデタラメなのに、もう twigs がアイデアを出し始めていた。とにかく速く、激しくカオスで、でも生産的だった」と Koreless は振り返っている。
「Childlike Things」には当時11歳の North West が日本語でラップで参加していて、その唐突さが逆に清々しい。
「Perfect Stranger」の MV には Phoebe Waller-Bridge と Yves Tumor が出演し、アルバム全体がファッション・映像・音楽を一体として構想されていることが伝わってくる。
まとめ
Grammy の Best Dance/Electronic Album 賞を受賞し、Mercury Prize にもノミネートされた。ただ賞より大事なことがある。
ダンス・ミュージックという、感情を「共有」するための音楽の中に、これほど個人的で肉体的な告白を埋め込めること——それが FKA twigs という存在の、他の誰にも真似できない部分だと思う。

