マイケミ(My Chemical Romance)おすすめ名盤『The Black Parade』レビュー|死生観を描いた感動のロック・オペラ/エモ大傑作

マイケミ(My Chemical Romance)おすすめ名盤『The Black Parade』レビュー|死生観を描いた感動のロック・オペラ/エモ大傑作 Emo / Hardcore Punk

My Chemical Romanceの『The Black Parade』は、2006年10月23日にReprise Recordsからリリースされた3作目のスタジオアルバムだ。

プロデューサーはバンドとRob Cavallo——Green DayやJawbreakerの仕事で知られる。全14曲、総収録時間約51分。Billboard 200とUKアルバムチャートの両方で2位を記録した。

アルバムの中心にあるのは「The Patient」と呼ばれる末期がんの男の物語だ。死の床で彼のもとへ現れる「死」の化身は、子供時代の最も鮮明な記憶——父親に連れて行ってもらったマーチングバンドのパレード——の姿をとる。

そこから「Black Parade」というコンセプトが生まれた。Gerard Wayは「死とは、あなたが最も愛したものになる」という言葉でアルバムの主題を説明している。

制作背景

バンドがLA入りしたのは2006年4月。まだアルバムの約3分の1しか書けていなかった。

CavalloはバンドからSilver Lake地区にある旧邸宅Paramour Mansionを見つけた。1918年に石油資産家のために建てられたこの邸宅には、彼女の事故死と幽霊の噂が絡みついていた。バンド全員が「何かがいる」と感じ、その重苦しい空気がそのままレコードに染み込んだとCavalloは述べている。

Mikey Wayはこの館で深刻な不安障害と抑うつを抱えるようになり、最終的に館を離れてセラピーを始めた。

Mikeyがいなくなった後、バンドは創作的な行き詰まりに陥った。転機はGerard WayがRay Toroの弾くOzzy Osbourne「Bark at the Moon」を耳にしたことだった。

「あいつは俺たちの曲を弾きたいのに、Ozzyを弾いていた。曲ははるかに速く、より怒っていた。純粋な欲求不満から来ているのがわかった」——そこからGerardはMikeyへの感情を全部ぶつけるように「Famous Last Words」の骨格を書いた。

翌朝Mikeyにその曲を聴かせると、バンド全員の士気が一気に回復した。

「Welcome to the Black Parade」の成立にも逸話がある。何年も完成しなかった曲だったが、ある朝Gerard WayとRob Cavalloが二人だけでスタジオに入った際、Cavalloが「卒業式で流れるような曲、でも下降していく感じ」というGerardのリクエストに応えてピアノで弾いた一節が転機になった。

Gerardはすぐに「When I was a young boy…」と歌い出した。あのピアノのイントロはその朝に生まれた。

後続アーティストへの影響

このアルバムがエモというジャンルに何をしたかを一言で言えば、「サブカルチャーの音楽」を「アリーナロックの壮大さ」に接続した、ということだ。

それ以前のエモはアイロニックな距離感を美学のひとつとしていた。MCRはその距離を完全に取り払い、死・喪失・恐怖を正面から扱うコンセプトアルバムを作った。

直接の後継として最も明確なのはTwenty One Pilotsだ。Tyler Josephはインタビューで繰り返しMCRへの影響を公言しており、「”The Patient”の視点で物語を書く」というアルバムの手法はTwenty One Pilotsが複数のアルバムで取り組んだ「コンセプト世界の構築」に直接繋がっています。

Paramore、Black Veil Brides、Yungbludも批評家から「The Black Parade の影響下にある」と繰り返し言及されている。

影響はロック外にも及び、Post MaloneはEmo Nite LAのイベントで「Welcome to the Black Parade」をプレイし、Machine Gun Kellyは自身のポップパンク作品でMCRへの言及を明示した。

Rolling Stoneは2020年版「史上最も偉大な500枚のアルバム」でこのアルバムを361位に選んでいます。

楽曲解説

The End.

アコースティックギターとピアノで始まり、曲の中盤で爆発する。「The Patient」の最後の瞬間を描く1曲目で、元々は「Father」というタイトルだった。

心拍モニターの音が平坦になるところで次の曲へ繋がる。このアルバムが通常のロックアルバムではないことを、最初の数十秒でリスナーに理解させる設計だ。

Dead!

「The End.」で心拍が止まった直後の爆発がこの曲だ。ホーンセクションが入ってくる瞬間の爆発力——「死」をテーマにしながらこれほどファンキーで前のめりな曲を書けるバンドは他にいない。

前作『Three Cheers for Sweet Revenge』の楽曲「Cemetery Drive」と同じ一節「Did you get what you deserve?」が登場し、前作と本作の密かな会話になっています。

Welcome to the Black Parade

Gメジャーを基調にG – D/F# – Em – Dという進行でヴァースが動き、コーラスでG – D – Em – Cへと展開する。

アウトロのブリッジ部分でAメジャーへ転調し、最後のコーラスはその調のまま終わる——半音上げる転調ではなく全音上がる転調で、感情的な「押し出し」ではなく「開放」の感覚を与える。

バンド史上最大のアンセムで、UKシングルチャートで2週連続1位を獲得した。

Cancer

GerardとCavalloがピアノを弾きながら8分で書き上げ、30分後には録音が終わっていた。

アルバムで最も静かな曲であり、最も重い曲だ。Gメジャーのシンプルな進行の上をピアノとアコースティックギターだけが動く。派手なカタルシスはない。ただ、静かに終わっていく。

Twenty One Pilotsは10周年トリビュートでこの曲のカバーを提供した——原曲の静けさを尊重した編曲だった。

Famous Last Words

RayがOzzy Osbourneの「Bark at the Moon」を弾いているのをGerardが耳にしたことから生まれた曲だ。

アルバムを通して積み重なってきた暗さが、最後に光へと転換する瞬間。歌詞の最後の一節「I am not afraid to keep on living / I am not afraid to walk this world alone」は、このアルバム全体の答えだ。

Daily Mailが「自殺を推奨するデスカルト」と非難したアルバムの最後のメッセージが「生き続けることを恐れない」だというのは、これほど真逆の読み違いもない。

まとめ

個人的に、このアルバムは「エモのバンドでしょ」という先入観を持ったまま敬遠していた。でも聴いてみると、そんな括り方がいかに雑だったかすぐわかった。

これはロックオペラで、コンセプトアルバムで、彼らの死生観の表明だ。「Welcome to the Black Parade」のサビを聴いた瞬間、そういう先入観が全部どこかへ飛んでいった。

幽霊屋敷で録音し、メンバーが精神的に崩壊しかけながら完成させた。そういう作られ方をしたアルバムが、最後に「生き続けることを恐れない」で終わる。それがこのアルバムのすべてだと思う。

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