ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Bring Me the Horizon)おすすめ名盤『POST HUMAN: NeX GEn』レビュー|メタル、エモ、ハイパーポップが交差する2024年屈指の傑作

ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Bring Me the Horizon)おすすめ名盤『POST HUMAN: NeX GEn』レビュー|メタル、エモ、ハイパーポップが交差する2024年屈指の傑作 Alternative Metal / Nu Metal

Bring Me the Horizonの『POST HUMAN: NeX GEn』は、2024年5月24日にサプライズリリースされたバンドの7枚目のスタジオアルバムだ。

2020年の『Post Human: Survival Horror』に続くPost Humanシリーズの第2弾で、全16曲・約55分。エモ、ポスト・ハードコア、ハイパーポップ、ニューメタル、メタルコアが交差するこのアルバムはMetacriticで84点を獲得し、Loudwireの2024年ベストロックアルバム6位にランクインした。

結成から20年近いキャリアの中で、Bring Me the Horizonはデスコア、メタルコアを基調にあらゆる方向へと自らを更新してきた。しかしその都度、どれほどサウンドが変わっても、自らの感情を切実に表現するコアは失われなかった。

今作でも、その事実は変わっていない。

制作背景

制作の途中で決定的な変化が起きた。2023年12月、キーボーディスト兼プロデューサーのJordan Fishが脱退したのだ。

『Sempiternal』以降10年間、Sykesのアイデアを完成した楽曲へと仕上げる役割を担っていた彼の喪失は、Sykesにとって「手足を失うような感覚」だったという。

しかし脱退後、バンドの空気は変わった。「Jordanが去った後、MattとLeeが本当にリフを書くようになって、一緒にジャムを始めた。昔のやり方に戻ったんだ」とSykesはNMEに語っている。

Matt NichollsとLee Maliaが作曲の前面に出ることで、バンドは「OliとJordanのデュオ」から「5人のBMTH」へと再び機能し始めた。Sykesは「失ったものより得たものの方が大きい」とRolling Stone UKに振り返っている。

アルバムの底流にあるのはSykesの回復の物語だ。「『Survival Horror』が『我々は全員終わりだ』というアルバムだとしたら、『NeX GEn』は答えを見つけようとする旅だ」とSykesはNMEに語っている。

「n/A」はリハビリの集会をモデルにした告白的な曲で、コーラスはUKアリーナツアーで観客とともに録音された。「sTraNgeRs」はウクライナと難民についての曲だが、Sykesは自身のリハビリ体験とリンクさせながら書いたという。個人の再生と社会への眼差しが、同じ言葉の中に重ねられている。

音楽性

今作ではメタルを基調に、エモ、ハイパーポップ、ニューメタル、ポスト・ハードコアが一枚のアルバムの中に同居している。

それだけ聞くと散漫に聞こえるかもしれないが、実際には逆で、どの曲にも耳に残るメロディーが必ず仕込まれている。どれほどジャンルが変わっても、サビで「引っかかる」という感覚を失わないのがBMTHの美点だ。

一方でエレクトロニクスが消えたわけでもない。Fish時代の洗練とは異なる、よりカオスな使い方になっていて、グリッチやノイズが曲の装飾として機能している。

総じてこのアルバムは「散らかっているのに整っている」という不思議なバランスを持っている。

ジャンルの縫い目が見えそうで見えない——それはSykesが20年かけて磨いたソングライティングの地力と、「5人のBMTH」として再起動したバンドのアンサンブルが、同じ方向を向いた結果だと思う。

楽曲解説

Kool-Aid

「AmEN!」「DArkSide」と並ぶアリーナ向けの壮大なコーラスを持つ先行シングルのひとつ。ニューメタルの影響が最も表面に出た3曲の中で、ポップとヘヴィネスのバランスが最も整っている。

YOUtopiaからKool-Aidへの曲間のトランジションは、アルバムの中でも特に気持ちいい流れで、アルバムを頭から通して聴くことを強く意識した作りになっている。

Top 10 staTues tHat CriEd bloOd

エモ回帰の意思を最も明確に示す一曲。ブリッジに突如現れるichika的なギターが曲全体の重心をずらし、「Rescue Me」というフレーズが2000年代半ばのフィーリングで耳に飛び込んでくる。

a bulleT w/ my namE On(feat. Underoath)

エレクトロニクス、ポスト・ハードコア、エモの要素を最もシームレスに融合させた一曲。Spencer ChamberlainとAaron Gillespieの参加が、曲全体の感情的な誠実さをさらに引き上げている。

アルバムの中でも最もまとまりのある構成で、ジャンルの縫い目が見えないほど音が自然に流れる。

n/A

リハビリの集会をモデルにした告白的な曲。Sykesの「Hello, Oli, you fucking knobhead / Did you think you had us fooled?」というラインはUKアリーナツアーの観客の声で録音されており、ライブ感が音源に直接刻まれている。

個人の回復と社会への眼差しが同じ言葉に重なるこのアルバムの底流が、最も直接的に表れている曲だ。

AmEN!(feat. Lil Uzi Vert & Daryl Palumbo)

アルバムで群を抜いて最も攻撃的な一曲。砕けるようなギターリフと荒々しいドラムのテンポ変化が、Sykesの絶叫するボーカルの重厚感を際立てる。

Palumboとの共演は、Sykesの子供時代の夢の実現でもある——そのことを知って聴くと、スクリームの熱量がまた別の色を帯びる。

まとめ

『Sempiternal』はメタルコア・バンドに「歌いながら叫ぶコーラス」の時代を切り拓き、『That’s The Spirit』は多くのバンドをアリーナ・ロック方向へ動かした。

今回のエモ回帰については、SeeYouSpaceCowboyやStatic Dressがすでにエモのサウンドを復活させてきた背景があり、BMTHが出遅れたのではという見方もある。しかしこのバンドがハイパーポップとエモをメタルコアの文法で処理したとき、それはBad Omensがデビュー時にBMTHを崇拝したのと同じように、次の世代のバンドに吸収されていくだろう。

Jordan Fishを失い、再び5人で楽器を手にとってジャムを始めたBring Me the Horizon——その「出発点への回帰」が、このアルバムの最大の収穫だ。

「答えを見つけようとする旅」として構想されたこのアルバムは、まだ答えを出していない。Sykesは「あと2作リリースする」と明言している。この旅の途中にいる今、このアルバムを聴くことに意味がある。

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